普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】法務担当の私にマインドチェンジがあったなと感じた2つの瞬間

 法務の仕事を7,8年やってくると、自分自身が仕事に向き合う際のマインドに変化が起きたな…と感じた瞬間が何度かありました。その中でも、大きく変わったなと感じた瞬間について言語化しておきたいと思います。

 

1.ルールが変わったことに気付いた瞬間

 私自身の属性は、いわゆる有資格者で、現在の職場にはいろいろあった末に流れ着いた形になります。そういった背景もあってか、法務の職種で働き始めた当初は、「法的な専門性の深さ」が評価されるための軸に違いないと思って仕事をしていたように思います。正直なところ、当時のいろいろな就職環境下で翻弄されたことから、うまくいっているように見える同期に対する恨み節のようなものが歪んだ執着をもたらしていたことは間違いないと思います。

 ただ、しばらく仕事をしていると、折角企業内にいるのであるから、法的な専門性の深さという軸で拘ることは逆にもったいないのではないか、それよりも企業内でしかできない向き合い方をした方が良いのではないかと考えるようになり、法的な専門性の深さよりは、「現場目線での事業への理解」を重視するようになった記憶です。正直、この時点では、消極的な意図で仕事への向き合い方が変わったという程度だったとは思います。

 さらにそんな調子で仕事を続けていると、他の人がどういう軸で仕事をしているのかというのが何となく見えるようになってきて、どういう人が評価されているのかというか、どういう人が評価されないのかが見えるようにはなってきた記憶です。この時点になって、ようやく、自分の働いている場所は「法的な専門性の深さ」ではなく、「ビジネスパーソンとして成果が出せるか」という軸で評価される場所だと気づいたんですね。最初からルールの違いを把握している人はいるのでしょうが、自分の場合は中で試行錯誤してようやく気付いたという感じでした。

 こんな感じでルールが変わったことに気付いたのが、自分にとっての大きなマインドチェンジがあった瞬間だったことは間違いありません。

 

2.事業の先にいる人に気付いた瞬間

 「ビジネスパーソンとして成果が出せるか」というルールの存在にようやく自覚的にはなったのですが、じゃあ、これは一体どういうことなのかが全くわからないというのが、次の課題ではありました。よく、ヒトモノカネの流れを知ってとか、法務パーソンは優れたビジネスパーソンであるべしといった言葉も聴きますが、自分の行動レベルにまで腹落ちしていなかったからか、何か引っかかりがある日々が続いた記憶です。

 そうした中で、タイミングに恵まれて、所属企業において新規事業の提案を行う研修に参加することになりました。そこでは、市場調査や実際のユーザーのニーズを探るインタビュー等を経験することになりました。

 この「事業の先にいるユーザーのニーズ」に触れたことで、ようやく、自分の中でハッとする瞬間が訪れたのを覚えています。それまでは、紙の上でヒトモノカネを整理する、企業の戦略を理解する、それらに沿ってリスクマネジメントを行っていくという一歩離れた社内コンサルのような感覚だったのが、事業の先にいるユーザーのニーズを掴みとろうとした経験をすることで、一気にグッと事業がリアリティあるものとして掴みとれるように感覚を味わいました。

 こうやって事業を作っていくのか…というこの感覚は、自分の中で大きなマインドチェンジをもたらすものでした。それまでは、事業に関係のありそうな事象に出会っても、どうしても「リスク」という切り口でしか想像が及ばなかったのですが、「市場がどう変わってどこにニーズが出現するか」という切り口での想像を試みるようになってきたのは大きな変化だと思います。

 

 上記のような2つの経験を通して、ようやく、法務の専門職能に籠っていてはダメで、ビジネスを創っていく方向でのスキルを上げていきたいと思えるようになったのが現在です。このマインドになるのに時間はかかったのですが、一つ一つ積み上げていきたい次第です。

 

以上