普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】中堅法務担当の私が足腰を鍛えなおすために読んだ本5選

 法務担当歴も9年目となり、いわゆる中堅法務担当と言われる年次になっています。この年次になると、これまでは与えられた仕事をこなすことが多かったのと比較して、自分で課題を見つけて、部門内外の人にあるべき形を提示し、巻き込み、PJを進めていくような仕事も増えてきます。

 そこで、改めて足腰を鍛えなおそうと思い読んだ本5選を紹介します。なお、いわゆる法務・法律の本はありません。

 

1.コンサル一年目が学ぶこと(大石哲之、ディスカバー・トゥエンティワン)

 やはり初心忘るべからずということで、私個人が社会人1年目の人に紹介する書籍を読み返しました。本書自体は、いわゆるロジカルシンキングの基礎を平易な言葉で説明しており、社会人1年目の人がビジネスパーソンとしてよく出会う言葉・概念などを学ぶために非常に良いと思っております。

 今の私の立場からすると、本書での深み自体はないものの、最低限知っておくべき足腰のベースとなる言葉・概念に抜け漏れがないか、また、自分の言葉で説明し、仕事のアウトプットで使える形になっているかどうかをチェックするために読みました。

 一方で、社会人1年目などであれば、まず、ここに書いてある言葉・概念をビジネスパーソンの基礎力として身に着けていくというのは、一つの指針になると思います。

 

2.新版 考える技術・書く技術(バーバラ・ミント、ダイヤモンド社

 巷でも名著と呼ばれる書籍ですが、この本はすごく難しい本だと思います。

 本書の特徴としては、「どう伝えるか」という部分が記載の前提にあり、その到達点から逆算したビジネスで必要な問題解決力を養うノウハウがふんだんに記載されている点にあります。

 前半部分のピラミッドストラクチャーの構成部分については、たまたま、これをよく理解したコンサルの方に、実際に自分でピラミッドストラクチャーを作っていろいろと指導を受ける機会があったため、あーなるほどと読めるようになりましたが、後半部分は正直理解が追い付いていません。繰り返しですが、ほんとうに難しい本です。

 ただ、やはり、他の問題解決やロジカルシンキングの書籍を読んでも、本書で述べられている事項がベースになっているのは明らかで、本書とじっくりと格闘していくのは足腰の強さになると強く感じます。

 

3.イシューからはじめよ(安宅和人英治出版

 こちらも巷で名著と呼ばれる本ですが、これもなかなか難しい。

 タイトル通り、イシューの質を高めることが知的生産性向上の鍵となると言っている本で、前半のイシュードリブンのところはなるほどと一読してわかりやすいのですが、中盤の仮説ドリブンの話になると、実務で思考する際にどの場面のことを言っているのかがわからなくなって、一気に難しくなりました。

 が、なぜわからないのかを深堀ったところ、問題解決の全体像を改めて見直し、自身の業務でどう役立つかベースで読み直すと、イシュードリブン・仮説ドリブンの双方でなるほどと思える記述が多いというのは気づかされました。

 企画業務などが増えてくると、仮説思考・論点思考は必要なスキルになるのでしょう。

 

4.ロジカル・プレゼンテーション(高田貴久、英治出版

 これは非常に良い本。

 提案は頑張って通さないと通らないものという当たり前のところからスタートし、「論理的に伝える」という観点を非常に丁寧に説明した本になっています。

 法務担当者の立場だと、専門的な知識をベースにやってくる課題を解決するスキルは身に着けやすいところですが、ポジションが上がっていき、部内外の自分とは異なる考えを持つ人を説得する必要が出てくると、「提案」というスキルを意識して磨かないといけないと強く感じているところです。

 前述の「考える技術・書く技術」が非常に難しい本であるのに比べると、本書は、実際の企業のケースを前提に説明を展開していることもあり、スッと頭に入ってきます。「論理的に伝える」という意味を本書から理解していくのは良いと思います。

 

5.問題解決(高田貴久・岩澤智之、英治出版

 これまた非常に良い本。

 前述の「ロジカル・プレゼンテーション」と著者も被っていますが、問題解決の部分についての思考プロセスを網羅的にかつこれでもかと丁寧に書いており、非常にわかりやすい。コンサル書籍ではありますが、トヨタの問題解決をかなり意識している感じがして、事業会社の思考にもなじみやすい。

 本書で良かったのは、発生型の問題解決と設定型の問題解決について、区分し、思考プロセスが書かれている点です。法務担当者の立場だと、前者のような紛争解決などの仕事と、後者のような制度設計などの仕事があるところですが、中堅になって、後者の仕事が増えてきた人には非常に良いと思います。

 こちらも、前述の「考える技術・書く技術」が非常に難しい本であるのに比べると、本書は、実際の企業のケースを前提に説明を展開していることもあり、スッと頭に入ってきます。問題解決の足腰がためには非常に良いと思います。

 

以上。