普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】一法務担当者の「事業部への質問」方法の変化を振り返る

 先日、Twitter上で人気を博している某法務系スペースを拝聴しました。その際のテーマは「事業部からの事情聴取と返し方」というものでした。

 これを聴きながらなるほど…と思ってはいたのですが、良い機会なので、自分自身の振り返りという意味で、自分自身の「事業部への事情聴取」の意味合いがどのように変化していったのかを振り返ってみることにします。とりあえずのところは、「契約審査」の場面を思い浮かべながら振り返ることにします。

 

1.全然聴かなかった期

 企業法務の仕事に携わり始めた頃は、正直言うと、事業部に対して何も質問しなかったような記憶です。というか、契約審査でやるべきことは、契約書の文言が法的に間違った言葉遣いになっていないか、いわゆるひな形との間で差分はないか、を確認するものと考えていたように思います。

 このように自分の中で認識していたからか、当然仕事は、ひな形が載っていそうな本と契約書の文字を見るだけで完結しますし、感覚的にも「処理をする」という言葉がまさにあてはまる仕事のやり方だったと思います。事業部門に対して何かを聴くということの意味がわからず、むしろ時間の無駄ではないかとすら感じていたように思います。

 仕事に携わって1年目と2年目の途中くらいまでは、正直、このような感覚だったと思います。部内でいろいろ突っ込まれた際にもうまく答えられなかった記憶です。

 

2.意味も分からず聴いていた期

 次の段階としては、先輩等を見よう見まねでというか、これを聴けと言われたので、それをそっくりそのまま聴いていた時期がある記憶です。具体的には、比較的時間もあったので、細かい案件もすべて、商流、金額、製品の仕様、納期等を粛々と聞き、あとで見直せるように整理しておりました。

 ただ、この時は意味もよくわからずに聴いていたので、事業部門から聴いた内容と自分のアウトプットの間の繋がりがよくわかりませんでした。なので、聴きはするものの、アウトプットは何も聴かなかった頃と変わらなかったように思います。

 3年目と4年目の途中くらいまではこんな感じだった記憶です。やってる感を感じ始めたころな気はします。

 

3.自分なりの意図を持ち聴き始めた期

 意図も分からず色々と聴いていると、事業部門の方から、実は今聞かれたこの部分でちょっと気になることがあって…と言われることがあることに気づきました。

 それに対しては、これこれで…と答えるわけですが、しばらく続けていると、ふと、事業の内容を知るべしとよく言うけど、聴くことに実は意味があるのではないか…と思い始めたような記憶です。こういう風に感じた後は、試しに、事業部門の方から懸念点を言われなくても、色々聴く中でこういう懸念て感じたりしてません?と積極的に聴くことを始め、それに対して、いや別にないですねという回答もあれば、確かに懸念はありますと言う回答も聴くようになった記憶です。

 この頃になると、徐々にですが、物の見方として、書面から見るのではなく、事業から見ることに意味があるな…と感じ始めたのを覚えています。そして、事業起点での自分自身のアウトプットをどう行うか、そのために、事業の意図と前提事実をどのように把握するか、といったことを意識し出したように思います。結果として、事業を知ることへの興味が出てきたのはこの頃だったように思います。

 

4.現状

 現状は、3.のようなことを粛々と続けているうちに、いわゆるビジネスとリーガルというはバシッと峻別できるものではないのではないかと思うようになってきた感じです。

 もう少し自分の職務にブレイクダウンして考えてみても、社内・社外の関係者と議論を実施する際に、これはビジネスマターだから…、これはリーガルマターだから…という整理をすることがよくあるように思います。でも、よく考えてみると、今の他人が整理した切り口は適切ではないのではないか、具体的には、その論点はビジネスマターとリーガルマターが混在しているということも感じることがありますし、また、単体で見ればリーガルマターだけども全体で見ればビジネスマターの意思決定も必要ということもあるように思います。

 こういう風にいろいろ考えてくると、議論の整理としてはこうすべきだし、そのための合意形成に必要な関係者は誰々と誰々で…と、主体的に議論に関与する契機が出てきているようにも思います。最近は、こういう観点を意識しながら、少しでも主体的な仕事ができないか…と模索しているところです。

 

 試しに、自身の振り返りを言語化してみましたが、また、いつか見直して、こんな時期もあったな…と感じたいところです。

 

以上