普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務2020年5月号 感想

  ビジネス法務2020年5月号を読みました。

ビジネス法務 2020年 05 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2020年 05 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/03/21
  • メディア: 雑誌
 

 

 本号の特集は、「訴状」の作成というものになっておりました。

 いろいろな視点からの記事が掲載されておりましたが、弁護士事務所における視点、企業内の法務部門における視点の2つが気になる点となりました。

 

● 「良い訴状」とは何か?訴訟における訴状の位置づけと起案の視点(中村直人、前掲12頁)

 本記事は、著名な弁護士である中村直人弁護士による「訴状」に対する考え方が記載されたものとなっています。

 本記事の内容は、「訴状」を作成する者が読んだ場合にも得るモノは多数あると思われるが、「訴状」作成を依頼する者、すなわち、企業の法務部門の担当者が読むことでも得るモノが多数あると思われます。

 企業の法務部門の担当者が直面する訴訟としては、取引に関わる紛争、労働に関わる紛争、コーポレート関係の紛争、取引当事者以外の第三者から提起される紛争等、様々なものがあると思います。訴訟というもののイメージが湧かないと、どのような訴訟も同じようなものではないか?と考えてしまうかもしれません。しかし、本記事においては、そのような考え方を改めさせてくれます。

 

しかし企業間の訴訟では、先が読めない事件が多い。もともと新しい法律の解釈の問題であったり、これまでにない係争類型や専門的知識に左右される事件など、過去の判例や学習の積み重ねがないケースが多い。裁判官も会社関係の法律に関わる機会は少ないし、経営や事業に関しては経験もないから、相場観もない。実際、会社関係訴訟では、各審級の判断が分かれる事案も多発している。そのため、弁護士の役割は重要で、どれだけ調査するか、どれだけ知恵を出すか、どれだけ裁判官の心を読めるかということが勝敗を分けることになる。そのような「新種」訴訟では、法律構成の仕方が最も重要である。(前掲12頁)

 

 自身が企業の法務部門において、訴訟案件を取り扱う場合、上記のような会社関係の訴訟に対するイメージは非常に重要なものになってくるかと思います。どのような場面において重要なものになってくるかというと、次に見る記事においてその位置づけを把握することができました。

 

 

● 事案調査、社外弁護士コミュニケーション 企業における訴訟対応と法務部門の役割(飯田浩隆、前掲32頁)

 本記事は、日立製作所の法務部門所属の飯田浩隆氏により、訴訟対応にあたって企業の法務部門の担当者が考えるべき事項が記載されています。

 企業の法務部門の視点から見た場合、訴訟案件における関係者としては、法務部門を中心に見たとき、社外弁護士、事業部門、経営者というものがありえます。

 

 まず、社外弁護士との関係性を考える上では、上記の中村弁護士の記事の記載が参考になるように思います。企業が直面する訴訟において、弁護士は上記のような発想をする、そうだとすれば、そのような弁護士の能力を最大限活かすためにはどのような支援を行えばよいでしょうか。

 また、事業部門との関係では、このような社外弁護士の能力を活かすために、事業部門から適切に情報を取得・整理していく。

 そして、経営部門との関係では、社外弁護士や事業部門とのやり取りの中で、重要な情報を整理し、報告と適切な経営判断を仰いでいく。

 このような一連の状況に関し、本記事では、

そうすると、法務部門は、訴訟対応が適切かつ効率的に進むためのコーディネーターの役割を果たすべきである。(前掲33頁)

と表現しています。

 

 訴訟案件に対応するための1つの考え方を得られる特集だったと思います。