【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2021年2月号 感想
Busuiness Law Journal 2021年2月号を読みました。
本号の特集は、「法務のためのブックガイド2021」でした。
本特集は毎年この時期に組まれており、法務担当者の「生の声」をベースにした書籍の感想を知ることができるので非常に参考になります*1。
今回は、同特集を読んで、実際に読んでみたいと思った本10選ということでまとめてみます。
1.債権総論(中田裕康)
2020年は民法改正が施行されたこともあり、多くの民法改正に関わる書籍が紹介されることがありました。ですが、結局、実際のビジネスにおいては、社会の複雑化を反映して、これまでとは異なるビジネススキームが続々と誕生しているところです。そんなときでも重要なのは、基本に立ち返り、当該ビジネスの権利義務関係を把握することだと思いますが、そのために必要な骨太の民法理解を得るために本書を読んでみたいと感じました*2。
2.電子契約導入ガイドブック(国内契約編)(高林淳編)
2020年はコロナの影響も相まって在宅勤務が進み、「電子契約」というのが一つのテーマとして取り上げられることが多かったように思います。現時点で導入をしていなくとも、近い将来導入検討せねばならないことは不可避でしょうし、また、取引先から電子契約での締結を求められることもあろうかと思います。そのような際の知識拡充のために読んでみたいと感じました*3。
3.AIと社会と法(宍戸常寿・大屋雄裕・小塚荘一郎・佐藤一郎編)
自社が属するビジネスであろうと、自分の業務であろうと、聞かない領域はないのではないかと思うくらい社会に浸透してきた「AI」という言葉ですが、では、実際に、社会に、そして法にどのような影響があるのかというとよくわからないところです。人による統治⇒法による統治⇒AIによる統治へと進んでいくのか、はたまた進むことはないのか。そんなことを考えて、法のあり方について本書を通じて考えてみたいと思いました。
4.未承認国家と覇権なき世界(廣瀬陽子)
現代のビジネスにおいては、いかなる業種においてもドメスティックに完結することはなく、何らかの形でグローバルに他国と繋がっていることが多いかと思います。特に、昨今は、米中の覇権戦争も含めて、社会の複雑化が進行しており、また、そのような社会情勢が法的な規制となり、法務担当者の職務に跳ね返ってくることも多くなっています。そのような現状を踏まえ、「社会を見る目」を養うという観点から読んでみたいと感じました。
5.希望の法務(明司雅宏)
本書については、SNS上でも多くの感想が書かれている印象です。昨今の法務界隈を取り巻く様子を見ていると、経産省による報告書が公表されたり、有資格者の増加も見られたりとその様子は変化の途上のように思います。また、少し視座を上げると、雇用の流動化や終身雇用の見直し等の労働改革、テレワークの推進等もあり、法務担当者としては考えるざるを得ないことが増えていると感じます。そんな中で、経験ある法務実務家の考え方を知るというのは、一つの軸を得ることにもなるでしょうし*4、これまであまりなかったタイプの書籍かと思い、読んでみたいと感じました。
6.現代の実践的内部監査(川村眞一)
法務担当者と監査担当者と言えば、業務の区分としては、本来的には別の担当者がつくべき問題かと思います。しかし、組織のリソースや様々なしがらみから、兼任する人がいることも事実です。また、法務担当者であっても、自身の関わる職務をどう監査する可能性があるのかといった視点を持っておくことは、時的に見て後工程の職務から逆算した形でのアウトプットを出すことにも繋がり、有益なことかと思います。「監査」の理論的側面を学ぶために読んでみたいと感じました。
7.継続取引における担保の利用法(髙井章光)
「取引」という観点から見た契約検討を行う場合、信用調査⇒契約スキーム検討⇒契約検討⇒契約締結⇒トラブル解決、という一連の流れの中での自身の職務を位置づけることは重要ですし、リスクはこの流れの中で相互に絡み合っているので、情報の共有も重要になってくるところです。この流れを考えるとき、「担保」というのは非常に重要なツールになってきます。また、コロナ禍での倒産増加リスクも考えれば、より意識する必要があると思います。実務的な視点から「担保」を学ぶために本書を読んでみたいと感じました。
8.「重要英単語と例文」で英文契約書の読み書きができる(本郷貴裕)
英文契約書の本は数多くありますが、「練習問題」で「読み書き」をマスターというコンセプトは見たことがなかった。著者のブログ記事は参考にさせてもらうこともあるし、著者が書いた別書籍を読んで個人的にはかなり良かったので、本書も読んでみたいと感じた。
9.データ利活用とプライバシー個人情報保護(渡邊涼介)
今までは単なるモノやサービスを提供するというビジネスだったとしても、今後はデータというものに向き合っていかねばならないし、法務担当者もビジネスの変化に伴い、必要な知識を仕入れていかねばならない。本書はタイトルに、データの「利活用」ということが強調されており、読んでみたいと感じた。
10.税法入門(金子宏・清水敬次・宮谷俊胤・畠山武道)
企業の中にいると、契約というのももちろん大事だけども、「税」というのはおそらくそれ以上に強く意識されている。目の前のビジネススキームを見る際にそういった視点があるかないのかでは検討の視座も関わってくるだろうし、税務を扱う担当者と共同してリスクマネジメントを行っていくためには税に関する基本的な知識が必要と感じる。そういった視点から読んでみたいと感じた。
本号の特集で読んでみたいと感じた本は以上になります。
さて、Business Law Journalは本号で休刊となってしまうとのことです。
私も最近は読んだ内容につき、本ブログにて感想を書いてきたので非常に寂しさを感じるところです*5。
同雑誌は、企業法務担当者の「生の声」を拾っている点で他の雑誌にはない特徴を有しており、正直、単なる法令解説であれば別途書籍を購入したりすれば良いので、この「生の声」に触れられる雑誌が休刊してしまうことには、非常に残念な気持ちでいっぱいです*6。
ですが、今後も本書のような「企業法務担当者の生の声」を拾った雑誌やメディアが出てくることを祈るばかりです!お疲れさまでした。
*1:最近はWebでも書籍紹介を数多く見ることができますが、広告宣伝的な意図の見える紹介も相当数あり、「生の声」の紹介というのは非常に貴重なものと感じております。特に、Webにて多くの情報に触れることができる現代社会においては、より貴重な情報ソースと感じます。
*2:初版は熟読した記憶です。
*3:同種の本は多々見られるところで、業者による宣伝色の強い本が相当数を占めると認識しておりますので、本書がどのような本かは気になるところです。
*4:軸がないと自身の考えを相対化もできない。
*5:あとは、アンケートを出して、よく美術館チケットもらったのも良い思い出です。
*6:特に、本号の特集でもある「法務のためのブックガイド」は非常に役に立っておりました。宣伝色の強い書評でもなく、本当の「生の声」が拾われており、予算やお小遣いが限られる中での本の選定に非常に役立ったところです。