普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2021年1月号 感想

 Business Law Journal 2021年1月号を読みました。

 

 本号の特集は、不祥事対策の現在というものでした。

 近年報道された不祥事事案を見ていくだけでも、個人情報関係、品質不正関係、外国公務員への贈賄関係等と、様々な類型の不祥事事案が見られるところです。加えて、このコロナ禍における社会環境や就業環境の変化によって、新たな不祥事事案の可能性も生まれてきているところです。

 このように、不祥事対策を考えるにあたっては、事業環境や社会環境等の変化によって新たに生まれてくる可能性のある不祥事に対して、逐一、対応策を考える必要があるというのが、そもそもの出発点として認識されているところかと思います。

 しかし、大きな流れとしてはこのような認識はあるとしても、実際の業務で具体的にアウトプットするにはどうしたらよいのかという点については、現場において一工夫する必要があるところかと思います。

 この点については、本特集の中でも、

近時のコンプライアンス重視の潮流を受け、多くの会社で、通報窓口の設置や監査体制の拡充等、不祥事情報を広く収集するための仕組みの整備が進められており、その結果、法務担当者の下には、日々、多くの不祥事(かもしれない)情報が集まるようにはなった。しかし、そこで得られた情報が、どのような不祥事の可能性を示しているのかに気付き、迅速に調査を進め、有効な対応策をとらなけらば、その不祥事に起因して発生する問題に適切に対応し、被害の拡大を防止することは難しい。(前掲18頁、「端緒情報別 不祥事対応マニュアル」(本村健、山名淳一))

と指摘しているところです。

 このような課題に対する対策として、本特集においては、カネの流れ発生する可能性のある不祥事類型、ジョウホウの流れから発生する可能性のある不祥事類型、会計処理の方法から発生する不祥事類型といった切り口での整理を試みています。

 このような整理というのが唯一無二の絶対的なモノだとは思いませんが、既存の法的な知識に関し実際の事業の文脈において整理するという発想は非常に参考になるかと思います。上記に見たような収集した情報がどのような不祥事に繋がるのかを判断できないという原因としては、法的な知識と目の前の事業がリンクしていないというのが大きいと思います。

 法的な文脈と事業の文脈をきっちりと相互に行き来できる形で整理しておくのが、こういった勘を養うのにも役立つのではないかと感じたところです。

 

以上