【法務】ビジネス法務 2020年12月号 感想
ビジネス法務2020年12月号を読みました。
本号の特集は、法務翻訳のテクニックというものです。
企業法務実務において、翻訳という場面は様々な場面で出てくるかと思います。日本語⇒英語への翻訳が必要な場面もあれば、英語⇒日本語への必要な場面もあります。また、ある言語で作成された規定等を別言語において展開するために翻訳するような場面もあれば、上層部への報告のために翻訳するような場面もあります。
これら様々な場面ごとに、翻訳の「目的」は違うので、当然アウトプットのレベルも違ってくるわけですが、現代の法務実務における「翻訳」において、切っても切り離せない技術というものが出てきているように思います。そう、「機械翻訳」との付き合い方です。
本特集でも、例に漏れず、多くの記事において、「機械翻訳」との付き合い方が示唆されています。
例えば、
前述のとおり、機械翻訳の翻訳構造は、元の翻訳対象文書の文章構造に大きく依存する。したがって、機械翻訳使用後のレビューの手間を省くためには、機械翻訳にかける前に、できる限り原文の構造を整理しておくことが重要である。(準備・レビュー段階で人の手による一工夫を「機械翻訳」使用上の留意点(門永真紀、前掲60頁))
ますます機械翻訳が進化していく今後、翻訳しやすい日本語を書く能力は必須になると思います。(翻訳しにくい日本語契約書への対処法(小林剛、前掲64頁))
というコメントは示唆に値すると思います。
これまでの法務業務における文書作成の技術としては、事業部門にとってわかりやすい文章を書く、裁判所に誤解を生むような判断をされない文章を書く、等の事業部門や裁判機関を受け手と考えた文書の作成方法が主として考えられてきたことかと思います。しかし、今後のテクノロジーの進歩に伴い、人が作成した文書をAIに読み込ませる場面が増えることを考えると、AIを受け手と考えた文書の作成方法も身に着けていかなければならないと考えられます。そのためには、前提として、AIがどのような仕組みで文書をレビューしているのかといったAIの特徴というものも理解しておく必要があると思われます。
本号の特集においては、その文書作成方法の意識すべき点が簡潔に書かれており、
① 長い文書は短く区切る
② 意識して「主語」を入れる
③ 用語集を活用する
といった3点に対する意識というのは示唆に富むところかと思います*1。
今後、法務業務における「文書作成」の様々な場面において、AIの活用というのが進んでいくことかと思われます。それは、翻訳の場面に限らないことかと思います。そこに向けて、AIを受け手の一人として見た文書作成の技法というのも磨いていく必要があると再認識した特集でした。
以上