普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2020年8月号 感想

 Business Law Journal 2020年8月号を読みました。

 

● ポストコロナ社会とこれからの法的リスク(前掲13頁以下)

 本号の特集はこれでした。

 これまでも法律雑誌においては、「コロナ」に関わる法務特集が組まれてきておりました。具体的な視点とすれば、

 ① コロナによる事業への影響に対しどのように対応していくか

 ② withコロナの法務とはどのような形であるべきか

という2つの視座があったと思います。

 本号の特集は、このどちらかに振れたものというよりは、様々な視点から「コロナ」と法務の関わりあいを述べた特集であると感じました。

 その中で、私が自身の業務に跳ね返らせようと感じた記事としては、「契約条項見直しの方向性」(有吉尚哉、森田多恵子、鶴岡勇誠)(前掲41頁以下)です。本記事の要旨としては、「コロナ」を法的概念上の位置づけとしては「不可抗力」の見地から捉えた上で、この概念が出てきうる「不可抗力免責」、「貸付不能事由」、「MAC条項」の「見直し」について述べられた記事になります。

 本記事と同じように「不可抗力」の見地からの「見直し」を行うとすれば、

 ① 既にひな形として出来上がっている契約書の見直し

 ② 個別の取引で一見で審査することになる契約書の修正思考の見直し

といった二つの視座があるように思います。

 このような観点から、日々の業務の「見直し」は行っていけば良いと思いますが、後々になって、よくぶつかる課題としては、なぜ「見直し」を行ったのかという視点がありえます。起きた現象が未だ記憶に新しいうちで、かつ、当時を経験したメンバーが残っている間であればさほど問題にはならないでしょうが、人の記憶はすぐに曖昧になってしまうものですし、人の入れ替わりが起きればなおさらのことだと思います。そのような課題に対応する一つの方策としては、「記録」するということに尽きると考えます。特に、withコロナの社会において、オフラインでのコミュニケーションが減ることから、より意識的なコミュニケーションが重要になってくると思います。その際には、この「記録」するという行為が意識的なコミュニケーションに役立つ一助にもなるのではないかと考えます。

 

● 宿泊・居住サブスクリプションサービスと行政許認可等に関する検討(西出智幸、高田翔行)(前掲62頁以下)

 本号の記事に、宿泊・居住サブスクリプションサービスに関わる検討記事がありました。中々、こういったビジネスをピンポイントに展開している企業は少ないかもしれませんが、記事の読み方としては、当該ビジネスそのものの知識を仕入れるという読み方以外に、仮に何らかの新規ビジネスを展開する相談が持ち込まれた際の思考を疑似的に行ってみるという読み方もできるのではないかと思いました。

 例えば、これまで経験やノウハウの乏しいビジネス領域の相談が持ち込まれた場合の対応としては、

 ① 当該ビジネスの対応方法をまとめた書籍等をリサーチする

 ② ①がない場合には法令等を調査の上、適切な専門家の助言を受ける

といったものが考えられます。

 本記事で展開されているビジネス等は②の要素が高いと思われますが、その場合、本記事でも展開されているような検討の進め方、具体的には、根拠となる法令と当該法令の解釈や運用を示す官公庁の資料のリサーチというものがそのスタートになってくるように思います。その上で、適切な場面で、専門家への相談を行う。

 今後、世の中のビジネスの方向性としては、レガシーな領域においても、DXの流れや異業種とのコラボレーションといった新規のビジネスモデルが出現する流れがあると思われますが、そのような場面での対応方法は考えておく必要があると感じました。

 

以上