普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務 2021年5月号 感想

 ビジネス法務2021年5月号を読みました。

 本号の特集は、「見えてきた導入後の運用課題 電子契約実務の研究」というものでした。

 電子契約に関する特集と言えば、これまでも様々な媒体において特集されてきたとことかと思います。そこでは、電子契約の法的位置づけやフローの導入といった「導入者にとって障壁となりうる事項」に焦点が当てられていたように思います。それらと比較すると、本特集の特徴としては、「導入後に見えてきた運用課題」という点に焦点が当てられていることかと思います。

 本特集で気になった視点としては、「電子契約と紙の契約書の併存」という視点でした。電子契約を導入するという段階になると、すべての契約を電子化するという発想になることもありますが、現実的には、法律上の障壁や事務手続上の障壁から、電子と紙を併存させて運用していくというのが、実際のありうる対応かと思います。

 その際の注意点を本特集では整理しており、その視点は参考になりました*1。具体的には、①契約締結フローにおける課題②管理上の課題の2点が参考になる視点でした。

 ①契約締結フローにおける課題については、前掲記事における*2、紙の契約書締結のフローを分析し、同フローの一つ一つに対し、電子契約締結フローの作業を「置き換える」ことで、紙の契約書と電子契約のフローを発想の上では統一化し、フローをシンプル化するという点は参考になる視点でした。

 ②管理上の課題については、前掲記事において*3、紙の契約書と電子契約の保管方法及びデータベースの作成という観点から比較した検討がなされてはおりましたが、前述の契約締結フローにおける課題とは異なり、両者をどう接合させていくかという視点がなく、この点の検討が欲しかったと感じるところです。

 個人的には、本記事において、「電子の契約書と紙の契約書の併存」、そして、それらを「シンプルな形」で接合していくという視点の重要性は気づかされたと思います。今後、電子化されていく部分は増えていくのでしょうが、現実的には併存していく期間もそれなりにあろうかと思うので、実務者としてはこの視点は非常に重要な視点かと思います。

*1:「紙と電子が混在する時代における契約管理の仕組み作り」(植田貴之、前掲24頁以下)、「締結用メールアドレス登録で一括管理」(小川智史・小柴大河、前掲41頁以下)。

*2:「締結用メールアドレス登録で一括管理」(小川智史・小柴大河、前掲43頁)。

*3:「紙と電子が混在する時代における契約管理の仕組み作り」(植田貴之、前掲25頁・26頁)。