普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務 2020年11月号 感想

 ビジネス法務2020年11月号を読みました。

ビジネス法務 2020年 11 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2020年 11 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/09/19
  • メディア: 雑誌
 

 

 本号の特集は、「弁護士・法務部長の失敗学」というものでありました。

 仕事をしていれば誰しも失敗することはつきものですし、失敗をしっかりと分析し、教訓を得ることが、次に繋がる上では重要なことと思います。そのような前提で、現在、様々な分野で多くの経験を有する企業内・法律事務所の実務家の方々の失敗経験とそこから学んだ教訓を記載したのが本号の特集でありました。

 本記事においては、当該実務家の方々の専門とされている領域での高度なレベルでの失敗談から、会議への寝坊といった赤裸々な失敗談*1まで記載されており、「失敗」というっても様々なレベルが存在するといったことが再認識できました。

 このような様々な失敗の話が書かれているわけですが、私個人が、特に気になった一節は次のものでした。

そして、その時々の会社の置かれている状況、業績、担当している案件の事業部の業績や計画、市場の動向や、顧客・競合の動向について、事業部門の人たちが関心を持つ事柄に対して同じように興味と当事者意識を持ち、知ろうとしてほしい。いかにビジネス部門の感覚、気持ちに寄り添い、同じ問題意識を持てるかが、我々の提供する法務サービスの質を上げ、優先順位に影響し、結果として得られる他部門からの評価にも、大きな影響を与えることを、私は経験として知っています。(「会社のお金については取り締まり屋であれ」(増見淳子、前掲32頁)

 同一節は、 筆者が経験浅かった頃、米国での研究開発契約での「お金」回りのリスクへで痛い目を見た経験から強く意識されていることかと思います。もちろん、こういった言説は、昨今企業法務を語る様々な文脈で見ることがあるのですが、「同じ問題意識」という言葉を明確に使用しているのはあまり見ないところではあります。

 ビジネス部門に寄り添うべしといった言葉をよく聞くことはありますが、寄り添うって何?物理的に時間を共有する?などと詰めて考えていくと、中々、分からないことが多いです。ですが、同じ問題意識=課題の目線を合わせるということであれば、その内実も少しずつ見えてくるように感じます。

 自分の解こうとしている課題はビジネス部門が見ている課題と同じなのか、勝手に課題だと考えているだけではないのか等と、日々の業務を自問自答してみると、ビジネス部門との距離感といったものも見えてくるのかもしれません。

 経験豊かな方の言説に自信を省みさせられた感想でした。 

 

以上

 

*1:「どのような状況においても、報・連・相は優先して行え」(三村まりこ、前掲33頁)。