【法務】ビジネス法務 2021年6月号 感想
ビジネス法務2021年6月号を読みました。
本号の特集の1つは、「リーガルリスクマネジメント実践の教科書」というものでした。2020年5月に公表された「ISO31022」をいかにして実践していくかという視点での特集となっています。
特集記事の中で目を引いたものは、「個人の視点で考える リスクマネジメントのためのコミュニケーション法‐ステークホルダーごとの留意事項を整理」(矢野敏樹、前掲30頁以下)でした。
本稿が着目しているのは、リスクの「発見」ではなく、リスクの「伝達・共有」に関する部分です。
リスクの発見に関するノウハウといったものは、諸々の書籍等で公開されていることも多く、また、日々の業務でも意識することが多いかと思います。しかし、リスクの伝達・共有という観点になると、中々語られることも少なく、各自の個別の努力に委ねられていることが多いかと思います。だからこそ、法務の業務属人化といったものも語られることが多いのかと思います。
そのような中で、本稿は、リスクの伝達・共有に関する視点として、以下のような形で整理します(前掲30頁以下)。
● 組織内のステークホルダーとの関係
・組織内におけるチーム内コミュニケーション
・組織内におけるチーム外コミュニケーション
● 組織外のステークホルダーとの関係
・事業者団体等を通じた外部とのコミュニケーション
・外部コミュニケーションで得た情報の組織内へのフィードバック
この中で、組織内のステークホルダーとの関係という視点は、法務部門におけるチームの組成方法といった観点や、事業部門とのコミュニケーションという形で語られることがままにあるトピックかと思います。また、組織外のステークホルダーとの関係のうち、事業者団体等を通じた外部とのコミュニケーションという観点も、規模の大小はあれ、昨今においてはルールメイキングという形で語られることもあります。
一方で、組織外のステークホルダーとの関係のうち、外部コミュニケーションで得た情報の組織内へのフィードバックという視点はあまり語られることがないように思います。担当レベルの視点で行けば、外部のセミナーや業界団体で得た情報を報告書という形でとりまとめ、部門内へ展開することは行われていることだと思います。ですが、報告のための報告ではないですが、外部とのコミュニケーションで得たリスクへの視点を共有するという明確な目的意識を持ってできているかというと、検討が必要な点だと思います。また、部門外の事業部門への伝達・共有という観点になると、どこまでできているのかは怪しくなってくる場面も多いのではないかと思います。
組織内・組織外のステークホルダーという基軸で「リスク」に関連するコミュニケーションを振り返るのに良い記事であったかと思います。