普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】「リスク状況の変化」に関して一法務担当者なりに考えてみた

 さて、少し前ですが、NBL No.1154(2019/9/15)を読んでいたところ、「企業コンプライアンス羅針盤 第2回 内部統制の要はリスク情報の入手システム」(中村直人(前掲48頁)という記事を見つけました。

 本記事の内容は、一法務担当者の自分から見ても非常に興味深いものでしたので、ここに備忘録を残しておきます。

 

● リスク状況の変化

・一法務担当者から見た場合、企業コンプライアンスに関わる業務の一つとして、リスク管理の仕組み作り」というものがあげられるかと思います。理論的には、「内部統制システムの構築義務及びその運用義務」という場面で出てくるものかと思います。

・当該企業のビジネスモデルはどのようなものか、ビジネス上のステージがどの段階にあるか等によって、リスク管理の仕組みの内容は企業ごとに異なるものであるとは思いますが、一法務担当者としては、一度作られたリスク管理の仕組みを変える必要はないか変えるのであればどういうタイミングで変えることになるのかといったことは、日々、気にすることになろうかと思います。

・このような点に関し、本記事においては、

いくつかの例を挙げたが、これらは要するに「リスクの状況が変わった」ということである。リスクの状況が変われば、内部統制システムもそれに応じて変える必要がある。もともと内部統制システムというのは、「リスク管理体制」そのものだからだ。(前掲48頁)

と述べられています。 

 そうだとすれば、一法務担当者として日頃から目を光らせておくべきものとしては、この「リスク状況の変化」というものになるのでしょう。

 

● 探知する情報

・ただ、「リスク状況の変化」という言葉だけを知っていたとしても、どうしても抽象的な言葉になってしまいますので、具体的にどういった情報を意識していれば良いのかが中々わかりにくいものになろうかと思います。

・そんな中で、本記事においては、以下のような諸点を意識しておくべき情報としてまとめております(前掲49頁)。

 ①新しい商品・サービスの提供

 ②新しい国・地域への進出

 ③製造方法・営業方法等の大きな変革

 ④大きな不祥事・新しい不祥事の発生

 ⑤不祥事や顧客クレーム等の発生状況の急速な変化

 ⑥法律、規則その他のルールの新設・改正、判例の変化、行政ルールの変化

 ⑦大きな社会情勢、国際情勢の変化

 ⑧事業に関わる技術の進展

 ⑨コンプライアンスや内部監査等に関する知見・実務の変化

 

● 一法務担当者なりにできること

・一法務担当者として仕事をしていると、法律を知らねばならない、ビジネスを知らねばならない、企業の組織も知らねばならない、世の中の状況も知らねばならない等、勉強すべきことがたくさん出てくるように思います。そんなことを考えているうちに、今勉強していることは、自身の業務にどう役に立つのか、と疑問に感じることが出てくることもあるかもしれません。そんな時、今自分が勉強していることは、(もちろんそれ以外にも意味はあるとは思いますが)リスク状況が変化したことを察知するために必要な情報だと考えることができれば、違った角度から、日々の勉強に取り組むこともできるかもしれません。

・特に、一般論にはなりますが、「不確実性」が強まってきている時代だとも言われていることを考えてみると、このような「変化」の兆しにうまく着眼することは、法務担当者が職務を実施する際の一つの切り口にもなるような気がします。

・実際、日々の業務で事業部門にアプローチする際も、このような「変化」が発生した場合には話がしやすいということもありえますし、逆に、「変化」が発生していない場合には、上記のような「情報」を収集する媒体を整理したり、また、部門内での共有体制を作るといった職務を行うことも可能かもしれません。

 

「リスク状況の変化」といったものを少し考えてみましたが、日々、いろいろとできることはありそうです。