普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2020年3月号 感想

  BUSINESS LAW JOURNAL2020年3月号を読みましたので備忘録です。

Business Law Journal 2020年 03 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2020年 03 月号 [雑誌]

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン
  • 発売日: 2020/01/21
  • メディア: 雑誌
 

 

1.【第2特集】法務として押さえておくべきビジネス保険のポイント(前掲31頁)

 本号の特集の1つが、ビジネス保険に関わるものでした。

 「リスクマネジメント」という観点から捉えた場合、保険にどう向き合うかということは非常に重要なものになるわけですが、この保険を取り扱う部署がどこになるのかということは、企業によってさまざまなものかと思います。本号のアンケート*1においても、保険の種類によって担当部署が異なるという回答が半数近くになっており、具体的な部署としては、人事・総務部門、法務・コンプライアンス部門、経理・財務部門とさまざまな部署名があげられているようです*2

 「リスクマネジメント」という切り口から保険に関しても法務部門が主導して扱うべきとの考え方もありうるところではありますが、「保険」を主導して扱うことになると、それ相応のリソースが必要となるわけですから、現実問題、主管部門の変更を行うことはかなり厳しいように思います。

 そうだとしてもできることはないか。そのような観点から考えた場合、

契約も保険もリスクを低減させるための重要な手段ですが、リスクをゼロにすることはできない以上、事業部に対して、契約でも保険でもカバーされていないリスクは何かをきちんと伝え、十分に留意してもらうことが、ビジネスリスクの低減に役立ちます。(前掲57頁)

 というのは一つの現実的な活動案かもしれません。

 保険の重要性というのは当該ビジネスの内容次第であるとは言えますが*3、そうだとしても、自社がどのような保険に加入しているのかそれらの保険はどこの部署が管理しているのかについては、日々の職務を通して情報収集していくことは必要かと思います*4。これらについて知っていれば、必要に応じて、社内ネットワークを構築しておき、当該保険の担当者に問い合わせることもできますしね。

 とりあえず、明日からでもすぐにできることはこの辺りでしょうか。その先は、優先順位との関係でどこまでやるかを決めていくことになろうかと思います。

 

2.ちょっとニッチなジョイントベンチャーの活用 民法上の組合を用いた契約形態を中心に(後編)(前掲74頁、安藤文子・永野恵利香)

 前号に引き続く特集となっており、ちょっとニッチなJV契約を扱う特集となっております。

 本号の前提とするJV契約を見る限り、いわゆる建設JVを前提としているようであり、国内外の入札プロジェクト案件に関わる場合には触れることもあるのではないでしょうか。

 ただし、本特集でも触れているように、当該分野については参照できる文献がほとんどないという状況です。発注者、受注者、金融機関等、案件に携わる利害関係者は多数存在すると想定されますが、そのような状況にも関わらず、文献があまりない。

 このような場合に、何を参照して分析していくか。ざっと考える素材としては、以下のようなものがあげられるでしょうか。

 ① 原則に戻って民法等の規定から考える

 ② 行政等によるモデル契約等がないか調べる

 ③ 英文での文献がないか調べる

 ④ 詳しい専門家にアクセスする

 ⑤ その他

 本特集では、①から始まり*5、②のような行政のモデル契約を検討*6する方法で分析がなされています。

 これ以外にも、日本法との異同という点は考慮する必要はありますが、③のように英文での文献を検索することで何かヒントは得られるかもしれませんし、それでも無理な場合に備えて、④のように、日頃から自社ビジネスに高い付加価値を提供してくれる専門家とのネットワーキングを作っておくことは非常に重要かと思います。

 と、わずかばかりですが、文献が少ない分野への対応方法を考えてみました。多かれ少なかれ、どのような企業においても、こういった分野でのビジネスは行っているものと考えられるので、対応方法は考えておく必要があるように思います。特に、変化の激しい時代であればこそ。

 

 以上、本号の備忘録でした。

*1:企業の法務部門の管理職を対象としている。

*2:前掲32頁

*3:いわゆる「不確実性」がどの程度あるビジネスなのかというのは、「リスクマネジメント」における「保険」の位置づけを考えるにあたって重要な視点になると考えます。

*4:前掲33頁のアンケート(法務部門として、自社のビジネス保険の加入状況や契約内容をどこまで把握していますか)によると、「おおよそ把握している」52.7%、「一部のみ把握している」30.9%、「まったく把握していない」9.1%、「その他」7.3%であり、思いの他、きっちり把握している割合は低い印象。

*5:建設JVの民法上の位置づけから検討がスタートしています。

*6:以下のページなどを参照している。https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000101.html