普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務2020年10月号 感想

 ビジネス法務2020年10月号を読みました。

ビジネス法務 2020年 10 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2020年 10 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/08/21
  • メディア: 雑誌
 

  本号の特集は、「コロナで見直す法務の業務基盤 契約実務×リーガルテック」というものでした。

 これまでも、同書を含めて企業法務関連の雑誌において、リーガルテックに関する特集は組まれておりましたし、また、昨今では関連するセミナーも多数実施されているところです。

 そのような中でも、本号の特集の意義を見出すとすれば、企業*1の具体的な導入事例が紹介されていた点かと思います。それらの各記事の構成としては、導入の経緯、導入プロセス、導入効果といった3点が主たるものとなっており、実際に社内での導入を検討する際の参考になる内容となっているかと感じます。

 

 この中でも、私個人が気になったのは、導入の経緯=当該企業がどのような諸点に課題を感じた結果としてリーガルテックを導入することになったのか、という点でした。

 この点に関し、本特集で紹介されている5社が課題と感じていた点を整理すると、

 ①業務の効率性強化

 ②ナレッジマネジメントの強化

のいずれか(又は双方)を課題として認識していたことが、リーガルテックを導入した主たる背景となっておりました。

 これらの視点というのは、当該企業全体の課題というよりは、あくまでも当該法務部門の課題としてリーガルテックを捉えていくものであると思います。

 

 これに対し、リーガルテックの企業内における位置づけという側面からは、NDA業務委託契約のリーガルテックへの適合性という観点からの記事ではありますが、

情報と業務とをいかに統制していくか、ということは、企業運営の中核であり、契約書だけでなく、取引をめぐる環境と社内の体制・ルールとを合わせた統合的な考慮が必要とされる。見かけの文言だけを、法務担当者のみを対象として効率化しても、統制の目的は十分に果たしたとはいえない。汎用的な規定以前に、それぞれの企業、事業ごとに、扱う情報のあり方や業務の担当のあり方を整理し、それに見合った社内体制を整備し、望ましい在り方や体制に適合した規定を示していくことが必要である。(「自社に合わせた用法の検討・アレンジが必要‐テクノロジー・サービス進化へのさらなる期待」(前掲38頁、望月治彦))

という指摘は、考慮しておくべき視点かと感じました。

 要するに、ここで示されているのは、リーガルテック導入の是非を判断するにあたっても、単なる法務部門における契約審査の課題としてではなく、企業全体の統制方法として位置づけを考えていかねばならないという視点だと思います。

 

 他のリーガルテックに関わる書籍やセミナーを見ていても、リーガルテック導入の位置づけを単なる法務部門の課題解決や法務のあり方論とセットで語られることも多いと思いますが*2、法務部門のガラパゴス化した問題の捉え方ではなく、事業や企業の統制の問題として捉えていくことも必要なのではないかと強く感じた次第です。

 

以上

 

*1:5社。

*2:このような語られ方になる理由もあるのでしょうが。