普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務 2019年7月号 感想

こちらも今更ですが、備忘録として気になった記事に関して感想めいたものを残しておきます。

 

ビジネス法務 2019年 07 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 

①「下請法違反を生じさせないシステム導入・教育」(和田壮史 ビジネス法務2019年7月号43頁)

・今回は「下請法実務の総点検」が特集となっており、どの記事も、様々な視点から下請法に関する有益な示唆が得られるものになっているなぁと感じました。

・その中でも、本記事が印象に残ったのは、他の記事に比してシンプルであった点。要するに、実務で最初に手を付けるべき「幹」となる部分はどこか、というのがわかりやすかったので、なるほどと感じました。

・「幹」となるのは、トップマネジメントによるコンプライアンス順守の視点、リスク対応を発注システム自体でカバー、教育の実施、書面監査への対応というのが簡潔でわかりやすかったです(あとは内部監査もか?)。

・課題欄でもあげられていますが、調達部門以外の部門で発生しうる下請法リスクにどう対応するか、というのは中々難しい問題かと*1。同じような啓蒙活動との考えもあるだろうが、リスクとの兼ね合いでここまでやるかという考えもあるだろうし、e-learningで済ませるというのもありかもしれない。

・個人的には、現場のリスク感覚の成熟度に応じて、教育内容や監査内容は都度見直していくべきだとは思いますが、その辺りも検討していくと考えることが多いですね。

 

②「先輩・後輩で描く 企業法務のグランドデザイン 第1回 これからの法務を考える」(須崎將人・中山剛志・宮下和昌 ビジネス法務2019年7月号54頁)

・タイトルを見てもわかるように壮大な試みであり、是非とも、今後の法務を考えるための一つの試金石となる企画になってほしいです。期待です。

・まだまだ企業法務界の若輩者である自分に本記事を語りつくせる見識はないですが、おっと思うフレーズとしては、

では、契約法務からどの方向に企業法務が進めばよいのだろうか。それは簡単に言うと、企業のリスク管理を担う組織として法務を再構築することである。(前掲56頁)

という点でした。

・個人的に思うのは、「企業のリスク管理を担う組織としての法務」というのを具体的なレベルに落とし込むとどういう仕事をなし、能力が必要とされるのかを考えていくのが、まぁ難しいという点です。各組織の実情によって違うでしょうし、それを考え、実行するのが法務マンの腕の見せ所やと言われればそれまでですが・・・。 

・例えば、リスクといっても、QCDに関わるリスク、コンプライアンスリスク、リーガルリスク、知財リスク等々とたくさんあり、それを主管する組織も様々な場合、その中で法務はどういう立ち位置になっていくのでしょうか。

・こういった組織論については、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(経産省 平成30年4月)*2でも、

複雑化するリスクに対しては、ビジネス・財務・税務・リーガル等の 総合的な判断が重要になるが、社内の様々なファンクションやプロセスが切れて しまっており、「タコツボ」化しているとの指摘もある。(前掲・28頁)

とあり、難しい課題なのでしょう。

・誰か偉い人、道を示してください・・・泣

 

③「法務部に伝えたい ”実効的”内部監査のコツ 第3回 その行動は合理的か?-違和感を大切に」 (樋口達 ビジネス法務2019年7月130頁)

・これはすごく面白いなぁと思いながら読みました。なぜかというと、内部監査の本てたくさんあると思うのですが、「法務」という視点から内部監査を論じる本て以外にないということから、結構興味深かったです。

・特に、「違和感」というものにフォーカスしているのが、すごく印象に残りました。

「違和感」といえば「不合理さ」というものに言い換えることもできるのでしょうが、これはまさに、「事実認定力」という司法研修所で考え方を習得する能力の一つを活かせる場面になるのかなと思います。

・あとは、この連載でも触れられていますが、「違和感の共有化」ってのが大事だと痛感しました。「共有化」による多角的な検証等が大事。「事実認定力」に「共有化」を行うためのプロセス構築能力が加わればさらなる強みとなっていくのでしょう。この辺りは意識しないと鍛えられないですからねぇ。

 

以上、今回の感じたことの備忘録にて。

*1:「社内監査の方法と実施のための体制整備」(村田恭介 ビジネス法務2019年7月号31頁)にも同旨の指摘あり

*2:

https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002-2.pdf