ビジネス法務2020年8月号を読みました。
今回の特集の1つは、改正公益通報者保護法で見直す実効的な「内部通報制度」というものでした。
組織のガバナンスを考える上では、「情報」のフローをどのように構築し、それを仕組みの中でどのように管理していくかを意図を持って設計することが重要と考えます。特に、「不祥事」に関わる「情報」であれば、早期に把握し、対処できるような仕組みを構築する必要があると考えられます。
このような「情報」のフローという切り口から考えた場合、
①「情報」の入り口をどのように捉えるか
②「情報」の流れが途中で途切れないようにするためにはどうすれば良いか
といった入り口と途中の2つの観点が重要になってくると思います。
このうち「内部通報制度」となると、①の「情報」の入り口の観点に関わってきて、きっちりと利用される環境を構築することが重要になってくると思います。
例えば、「内部通報制度の機能不全要因の解消・改善への処方箋」(中村克己、前掲91頁以下)においては、内部通報制度が機能不全となる要因を整理しており、
・従業員が内部通用について正しい理解・認識を有していない
⇒”内部通報”について正確な理解を欠いている
⇒リスク(不正)情報に接した場合に、取るべき行為への認識を欠いている
⇒目の前にある不正を”自分事”として捉えていない
・従業員の内部通報への抵抗感が強い
⇒経営陣・担当部門への信頼・期待の欠如
⇒報復等(不利益)への不安感
⇒通報へのインセンティブの欠如
⇒予測可能性の欠如(=通報後のフローが見えていない)
といった整理をしています。
このような整理は非常に有益なもので、法務担当者やコンプライアンス担当者の視点からすれば、個々の企業によってその課題の振れ幅はあるにしても、上記のような諸課題を解決するような施策を行っていくことが有益であることを示すようなものだと考えられます。
例えば、「リスク(不正)情報に接した場合に、取るべき行為への認識を欠いている」という課題に対しては、
「(1)まずはラインの上司に相談しましょう、(2)それが難しいなら、別のラインの上司に相談しましょう、(3)それも難しいなら、法務・コンプライアンス・人事・CSRなどの部門に相談しましょう、(4)それも難しいなら、ぜひ内部通報制度を利用してください 」といった具体的な行動を示すのである。(「グループ内部通報制度の設計・運用」倉橋雄作、前掲89頁)
といった形での具体的な行動を示すことで、他の従業員に対し、行動をイメージしてもらうことで対処していくことになるのだと思います。
その他にも、個々には施策を考えることはできますが、まずもって大事なのは、不正に関する情報フローを仕組みで管理するといった点がスタートになってくると思います。この点を抜きにして、手段が目的化しないように気を付けていきたいところです。
以上