普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2019年7月号 感想

今更ではあるが、備忘録も兼ねて表題の雑誌記事の感想をつらつらと書いておく。とりあえず、気になった記事は以下の3つ。

 

Business Law Journal 2019年 07 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 

①「海外取引トラブルにおける法務担当者の役割」(中尾智三郎 BUSINESS LAW JOURNAL 136号24頁(2019年))

・企業内の実務担当者らしい記事という印象。

・極めてざっくりまとめてしまうと、契約書の文字だけ読んでいても意味はない、あらゆる角度からビジネスと連動させないと意味はない、というところでしょう。

・特に、

意見が分かれる点かもしれませんが、交渉まで担当しないかぎり、契約書は「読めない」「書けない」「分からない」ようにように思います。(前掲・25頁)

という点は、考えさせられる。

個人的には、①法務担当者が交渉現場に行くべき案件はどのような案件か、②行くべき企業文化が醸成されていない場合にどうすべきか、という点は考えなければならないと思っている。

前者については、正直なところ、未だ自分の考えがまとまっていない。どういった点を考えていけばよいのだろうか。要検討。

後者については、

(STEP1)持ち込まれた事業部の案件について深くコミットし、かつ成果を出す

(STEP2)STEP1を繰り返し、事業部門の信頼を得る

(STEP3)案件のスタート時からコミットし、かつ主体的な支援提案を行う

くらいにまで、徐々に進めていかないと何も変わらないような気がする。ここまで来てようやく、現場に行って付加価値提供できるくらいな気もしなくもない。

 

②「海外販売店契約で頻発するトラブルとその対応策」(竹平征吾・土岐俊太 BUSINESS LAW JOURNAL 136号28頁(2019年))

・①とは異なり、弁護士らしい記事という印象。

・契約交渉⇒取引継続中⇒契約更新⇒契約終了、という時系列という切り口からDistributor Agreementにて問題となりうる論点を整理するというのは参考にさせてもらおうと感じた。こういう視点では見ていなかったなぁ。

・検討すべき点の一つとして競争法上のリスクがあげられているが、競争法上の問題が発生しうる場面という観点からすると、horizontalな関係よりも、verticalな場面の方がより経済法的な側面の検討が必要=ビジネスにより踏み込んで実態を把握する必要+リスクがある場合の別案提案の必要といった点に関する難しさを常々感じる次第である。また、Distributorの売り先の属性によってもリスクが異なってくるので(民間なのか官公庁なのか等)、検討の難しさを感じる次第。

・Agent Agreementについてはあえて触れないという方針をとっているようではあるが、実務においてもままにあるのではないかとの印象(業界による?)。この場合だと、commissionの金額と税務的な視点等別途の論点が出てくるのでしょう。

 

③「中国・ASEAN企業と締結する調達・販売契約のトラブルとその対応策」(江口拓哉 BUSINESS LAW JOURNAL 136号51頁(2019年))

・中国・ASEAN企業との取引において問題となりそうなポイントに関して、かゆいところに手が届くことが結構書いており、非常に参考かつ勉強になった。

・特に、保険や仲裁実務の最新の動向といったところにまで触れられており、例えば、仲裁機関の選択に関して新たな視点を持つことができたように思う。

・加えて、L/Cの発行銀行の選択基準にまできちんと踏み込んだ検討がされているのは、企業の実務担当者としてはかなりおっと思わせられるレベルの気づきを得ることができた。

 

以上、今回の参考になった点に関する備忘録。