普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】一法務担当者の私が普段使っている本5選

 毎年の年末は某紙の法務のためのブックガイドを確認することで、巷の法務関連の書籍を確認し、必要なモノを購入していたのですが、某紙が休刊になってしまったことでこの企画もなく残念に感じております。

 そんなこんなもありながら、たまには自分の普段使うことが多い本でも整理してみようかと思い、良い機会なので以下にて5選という形で整理してみました。この辺りが業務で現状よく使う本になっています。

 

1.【新訂版】英文契約書作成のキーポイント(中村秀雄、商事法務)

 英文契約書の書籍と言えば、今やさまざまな書籍が出ているけども、自分が仕事をしていて悩みが出た際に確認する本はこの本です。おそらく、新しい本か古い本かと言われればかなり古い本に該当するのですが、実務でぶつかるかゆい所にほんとうに手が届く本です。良い本に新しい古いはないと感じます。

 同じく中村秀雄先生が書かれた国際商取引契約―英国法にもとづく分析(中村秀雄有斐閣も面白くたまに読み返すことがあります。国際売買契約の条項が確認したくなった際には国際売買契約ハンドブック(田中信幸・中川英彦・仲谷卓芳、有斐閣*1国際取引契約実務マニュアル(日商岩井株式会社法務リスクマネジメント部、中央経済社を見ることが多いですね。英文契約の条項をもっと網羅的に見たいときは英文ビジネス契約書大辞典【増補改訂版】(山本孝夫、日本経済新聞出版)を見ることもあります。

 一方で、その前提となる英米法の概念を確認したいと思った際は、アメリカ契約法【第2版】(樋口範雄、有斐閣体系アメリカ契約法(平野晋、中央大学出版部)にて簡単にその内容を確認しています。

 

2.ITビジネスの契約実務【第2版】(伊藤 雅浩・久礼 美紀子・高瀬 亜富、商事法務)

 いわゆるIT企業は当然のこと、IT企業ではない他業種の企業であっても、今やITがらみの案件に遭遇することはよくあることになってきているかと思います。本書では、IT関係の契約条項の解説だけではなく、ITが絡んだ場合の取引スキームの分析に役立つ視点もふんだんに書かれており、IT業界にいない場合でも前提知識を仕入れるのに非常に良い本と感じます。

 そもそもの民法上の概念を確認したいといった場合には、債権総論【第4版】(中田裕康、岩波書店契約法【新版】(中田裕康、有斐閣を紐解くことが多いです。これらの書籍は民法上の概念の説明もしっかりとした根拠を基に書かれており、理解もしやすいです。法学の勉強をあまりしたことがないという人には、リーガルベイシス民法入門【第3版】(道垣内弘人、日本経済新聞出版)民法全体を1冊にまとめていることから、業務で出てきた部分を逐一読んでみてはどうか?と勧めることも多いです。

 

3.個人情報保護法の知識【第5版】(岡村久道、日本経済新聞出版)

 あらゆる業界においてデータというものが重視されるようになってきたことで、必然的に個人情報保護法というのも実務で接することが多くなってきたように思います。もちろん、法令や個人情報保護委員会のQ&Aやガイドラインは確認するのですが、個人情報保護法を専門に行っていない立場からすると、いきなりのイメージを持ちづらいことが多いです。そんなときは、本書の簡潔な記載を読むことで大雑把な理解を作るということにしています。

 直近の改正としては、一問一答令和2年改正個人情報保護法(佐脇紀代志、商事法務)一問一答令和3年改正個人情報保護法(冨安泰一郎・中田響、商事法務)を参照することになりますし、世間を賑わせた個人情報保護法関連の事例の概要を確認して業務に役立てたいと考えた場合には令和2年改正 個人情報保護法の実務対応-Q&Aと事例- (第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会、新日本法規出版)の後半部分がよくまとまっており非常に参考になります。

 

4.独禁法務の実践知(長澤哲也、有斐閣

 独占禁止法に関する実務上の悩みが出てきた際にはこの本に当たることが多いです。本書は自学自習をするにあたっても、企業法務の実務の思考に個人的に馴染みやすいと考える体系で独禁法を整理しており、業務を行うにあたって独禁法上の論点発見や分析視座の向上にも非常に役立っています。

 独禁法の勉強を行っていこうというのであれば、独禁法の授業をはじめます(菅久修一、商事法務)はですます調で書かれており読みやすさはあると思いますし、もう少し先に進もうと思えばベーシック経済法【第5版】(川濵昇・瀬領真悟・泉水文雄・和久井理子、有斐閣も非常に読みやすい本と思います。また、もう少し独禁法の総論的な思考を言語化させたいとなってくれば独禁法講義【第9版】(白石忠志、有斐閣は非常におススメです。公取委運用実務確認という観点からは独占禁止法【第4版】(品川武・伊永大輔・原田郁・菅久修一、商事法務)を見たりもします。

 

5.株式会社法(江頭憲治郎、有斐閣

 企業で法務の仕事に携わっていると様々な場面で会社法に触れることはあると思いますが、条文の確認は当然としても、必ず本書の記載も確認するようにしてます。様々な実務書で調べものをした後においても、ほんとにそうか?と確認するためにこの本も使うといった感じですね。マストな本だと思います。

 調べものをするという観点ではなく、周辺部分の知識も含めて自学自習をしておきたいと考える際には、会社法(田中亘、東京大学出版会を用いて会社法の理解を確認することも多いです。実務書としては、商事法務のハンドブックシリーズを確認することが多いです。

 

 

 以上に掲げた本は一部ですし、実際にはもっと多くの書籍を場面に応じて参照しています。最近ではサブスクサービスを用いた閲覧も増えてきたところです。今後はリサーチや書籍の所有の在り方も変わっていくのだろうと思うので、世の中の状況も見ながら自分自身の考え方や姿勢というのも見直していこうと強く考える次第です。

 

以上

*1:現在は、新・国際売買契約ハンドブック【第2版】が最新版です。