普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】今の私が新入社員の法務担当者に薦める本5選+α

 季節柄、新入社員が法務担当部署に配属されることもあるように思います。そこで、*1の私が新入社員がやってきた場合に薦めるであろう本を選んでみました*2「挫折しない」が一つの軸になっています。

 

1.今日から法務パーソン(藤井豊久・守田達也編著 企業法務向上委員会著、商事法務)

 企業法務の入門本はいくつかあるのだけど、個人的にはこの本を推します。

 本書の特徴は、企業内の経験ある複数の実務家が企業法務の心構えや実際に業務を遂行する上での注意点を語ってくれている点にあります。配属された際にしっかりとした指導員の下で適切な指導を受けて仕事へのモチベーションを高めていければそれがベストと思いますが、そういった環境はそれほど多くないでしょうし、また、そもそも自分がなぜ法務部門なの…?と考える人もいると思います。そんなとき、新入社員の法務担当者の方が仕事に前向きに取り組む気持ちにさせてくれる本だと思います*3

 他にも類似のテーマの本はあるのですが、「読みやすさ」という観点を重視すべきと私は思うので、本書を推します。本を読むって想像以上にハードルが高い。

 

2.契約書の見方・作り方 第2版(渕邊善彦、日経BPマーケティング

 契約書の本を1冊読んでみようと思うなら、この本を推します。

 本書の特徴は何といっても薄くて挫折しにくいというところだと思います。法務担当として配属されると、まずは契約審査業務を扱うことになると思いますし、それが基礎基本になると思います。指導員の方からは、簡単な秘密保持契約書や売買契約書、業務委託契約書のレビューをしてみて!と言われることもあると思いますし、自社のひな形について勉強することを勧められるかもしれません。そんなときに、まずは契約書ってなんだ?ってところをサッと抑えておくと良いと思いますが、そんなニーズに答えてくれる本だと思います*4

 契約書の本だと定評ある書籍は何冊もありますし、また、分野ごとに紐解くべき書籍もあるのですが、まずは薄い本で挫折しないことが大事と思います。「挫折しない」がほんとに大事です。

 

3.ここからはじめる企業法務(豊島和弘、英治出版

 具体的な案件に則したOJTの意味合いを学びたいなら、この本を推します。

 本書の特徴は、製造業の法務案件の具体的な流れに沿って、ビジネスに則して法務業務を行うってどういうこと?というのが具体的かつ簡潔に言語化されている点だと思います。新入社員の法務担当の方なら指導員の案件相談に同席し、指導員の方のヒアリング状況を目にすることは多々あると思います。また、自分がヒアリングしたことに突っ込みが入ることもあると思います。そんなとき、その突っ込みの理由をしっかりと言語化した指導をしてくれれば良いですが、中々そう都合よく教えてもらえないかもしれません。本書はそのヒアリングの「背景」をストーリーに沿って書いてくれており、非常に良いです*5

 

4.コンサル一年目が学ぶこと(大石哲之、ディスカバー・トゥエンティワン)

 ビジネスパーソンの物の考え方ってどうやるの?の基礎を学ぶのに良い本だと思います。

 本書の特徴は、いわゆるロジカルシンキングとか結論から話すとか、ビジネスパーソンが身に着けておくべき基礎的なスキルをさらっと一通り学べる点にあります。新入社員の立場で一番面と食らう点としては、「会社は学校とは違う」というところだと思います。自分が新人の頃とかを思い出すと、学生気分が抜けないってのはあったように思います。というか、先輩や上司が何をやろうとしているのかもよくわからなかったです。そんな中でも、本書は、ビジネスパーソンとして先輩社員や上司と「対話」していくための基本のキを身に着けるのに役立つと思います*6

 

5.法学を学ぶのはなぜ?(森田果、有斐閣

 法律をちゃんと勉強してみよう!という気にさせてくれる本だと思います。

 法務担当として配属される新入社員にはいろんなバックグラウンドの人がいると思います。めちゃくちゃ法律の勉強をしてきた人、法学部だけど全然勉強しなかった人、そもそも法学部ですらない人もいると思います。人によっては法律の勉強とか無理…と思う人もいると思います。それは仕方ない。でも、配属された以上は、仕事に必要な勉強はしなければいけないし、できれば楽しんで勉強できると良いと思います。本書は、法律って難しいよね…っていうのは受け止めた上で、よくあるお勉強本とは一味違う本になっています。具体的には、法律があることで人や社会てどうやって変わってくの?みたいな少し変わったことというか、面白いことが書いてます*7

 個人的には、せっかく法務担当として配属されたのであれば、面白く興味を持って法律の世界に入っていってほしいと思います。人生に新しいページが増えることもあるかもしれません。

 

番外編.ビジネス実務法務検定試験

 いくつか本は紹介してきましたが、やはり「資格試験」という目標があると勉強しようという気持ちになると思います。個人的には、ビジネス実務法務検定の3級・2級を順番に受けることをお勧めしたいです。ビジネスに必要な法律知識という切り口からざっといろいろな法律を学ぶのに非常に良い検定だと思います。

 

以上

*1:2023年3月26日時点。

*2:別の切り口での本についても選定予定です。有資格者として初めて法務担当になったときに読んだらよいと思う本、3から5年目の法務担当が読んだらよいと思う本とか。

*3:ただし、全部が全部その通りとは思いません。こういう考え方もあるんだ!まずは試してみようかな!くらいで読むのが良いと思います。

*4:ただし、民法改正の過渡期の本なので、そこの構成が読みにくい。

*5:ただし、製造業以外の新入社員にどこまで響くかは不明。

*6:ただし、どれだけ本で学んでも実際の仕事は最初は辛いものがある。

*7:ただし、本書の見方は一面に光をあてたものに過ぎない。