【法務】ビジネス法務 2020年4月号 感想
ビジネス法務2020年4月号を読みました。備忘録*1。
● 特集1 今こそ変化のとき 電子契約のしくみと導入のプロセス(本書12頁以下)
本号の特集その1は、電子契約特集でした*2。
昨今、法務界隈においては、リーガルテックという言葉を聞くことも増えてきましたが、その一つとして「電子契約」というものがあります。この電子契約に関わるプロダクトとしては様々なものがありますが*3、どのようなプロダクトを導入するにしても、企業側としては、電子契約におけるメリットとデメリットを把握し、かつ検討することが必要と思います。
本号の特集においては、そのようなメリットとデメリットも紹介されており、
メリット :印紙代削減、
作業率向上・文書関係費用の削減
コンプライアンス向上
BCPへの寄与
デメリット:意思表示の撤回の問題
バックデートの問題
導入の問題
といった整理がなされております*4。
実務的な見地から言えば、上記のメリット・デメリットの広がる範囲という点からすると、電子契約導入を法務部門単独で推し進めることは難しいことかと思います。
そう考えたとき、この電子契約の問題をどのような切り口から考えていけば良いかというと、本特集でも示唆されてはいますが*5、単なる紙ベースの契約書を電子契約に切り替えるという位置づけではなく、より大きな視野で情報ガバナンス体制をどのような考えるかという位置づけで考えていく必要があると思います。
もしこのような切り口での電子契約導入ということになれば、IT部門が主導権を持つ必要性というのも出てきますし、法務部門として付加価値を発揮する場面としては、契約書の成立の真正性、社内規定との整合性、下請法上のリスクの有無等といった法的リスクの検討に相応のリソースを割く必要も出てくるかと思います*6。
いずれにせよ、遅かれ早かれ、どこかの時点ではIT化は避けられないと思いますので、アンテナを張っておくべきテーマかとは思います。
● 特集2 各国の基本枠組みと最新動向 輸出規制コンプライアンス(本書64頁以下)
本号の特集2は、輸出規制コンプライアンスというものでした。
輸出規制の観点は、グローバルに展開する製造業であれば必ず気にせねばならない観点ですし、特に、昨今の米中貿易戦争も含めたグローバルでの政治情勢の不安定さに起因して、極めて「変化」が激しい分野の1つになっているかと思います。実際、本号の特集を見ても、各国の法令規制の紹介がされており、その変化の激しさが伺われるところではあります。
この分野についても、特集1と同じような観点から見ると、輸出規制に関する問題に関し、単なる輸出規制法令に違反しない問題と位置づけるか、より大きな視野で貿易管理ガバナンスの問題と位置づけるかで日々の対応も変わってくるように思います。
前者のような位置づけであれば、法令の変化に関する情報収集とそれに基づく案件対応を行っていくことが主たる職責になってくるとは思いますが、後者のような位置づけであれば、自社にとっての貿易管理に関するガバナンスはどのようなものが良いのか、リスク管理の方策としてスリーラインディフェンスは効いているのか、PDCAサイクルは回っているのか等、職責の広がりが出てくるように思います。
輸出規制コンプライアンスをどのような位置づけにするかは各社の置かれている状況によって異なるとは思いますが、自社でどのような位置づけが良いのかは、「変化」ということも踏まえて、逐次、見直していく必要があると感じました。
以上、本号では2つの特集に考えるところがありましたが、どちらも当該問題をどのような切り口で位置づけるのかといった点は、企業内にいる者としては考える必要があるのではないかと思いました。