普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】今の私が3から5年目くらいの法務担当者に薦める本5選+α

 年度が変わる季節ということで、仕事についても心機一転頑張っていこう!と思っている方も多くいるように思います。そこで、*1の私が3から5年目くらいの法務担当者に薦めるであろう本を選んでみました*2一人で案件を何とか回せるようになり、他領域にも興味を持つを軸に考えてみました。

 

1.スキルアップのための企業法務のセオリー(第2版)(瀧川英雄、第一法規

 担当案件を一人で遂行する軸を作る切り口で、この本を推します。

 本書の特徴は、なんといっても企業法務の担当案件遂行にあたっての暗黙知言語化されているという点に尽きると思います。特に、その中でも本書の特筆すべき点は、第2部の企業法務遂行スキルの章と第3部の典型的な法務案件のセオリーという部分で、一般的な企業であれば上司や先輩から教わる暗黙知についてうまく言語化されて非常に良くまとまっているという点です。これまでいろいろな契約書を見てきた年次であれば、それを抽象化して他案件に応用するというのはどういうことなのか、というのを学ぶことができる本だと思います*3

 

2.事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック(第2版)(塩野誠・宮下和昌、東洋経済新報社

 担当案件遂行時の視点の切り替え方を学ぶということで、この本を推します。

 本書の切り口の面白いところは、ビジネスサイドから見た視点で法的視点はどのように位置づけられるのかというのが、しっかりと整理されている点だと思います。それまで契約書中心で「法務の世界」でのみ仕事をしてきたのであれば、どこかの段階でビジネスの文脈に自分の仕事を乗っける感覚を身に着けるのは必要かと思います。本書はその視点を身に着ける観点で良い本と思います*4

 ただ、本書の内容が網羅的か否かといった点や十分に深堀されていないといった点はあるので、何を学ぶ本であるかは意識する必要はあると思います。また、ある程度の前提知識がないまま読み始めると途中で挫折する厚さかなとは思うので、その点は注意かもしれません。

 

3.民法有斐閣ストゥディア)(有斐閣

 民法の基礎体力を身に着けるのであればこの本を推します*5

 民法の入門書はいくつかありますが、本書の特徴は他の入門書では中々説明されない基本のキの部分をしっかり言語化してくれているところだと思います。企業法務の業務を行う際には、専門的な法的知識は必要があれば外部の弁護士等から調達可能なので、どこまで勉強するかは検討の余地があるところです。ただ、個人的には、民法だけはある程度の軸を持っておくと、わけのわからない相談が来た時でも事案の整理の見通しはよくなるのかなと感じます。典型的な契約審査業務から一歩踏み出す年次であれば、民法の考え方を軸として持っておくのは良いと感じます*6

 ちなみに、個人的には、契約法⇒債権総論⇒民法総則⇒物権 or 担保物権のように、具体性のある領域から勉強した方が挫折しないとは感じます。社会人になってからの勉強は挫折しないが重要な気がしますので、勉強方法は工夫した方が良いと感じます。 

 

4.簿記の本(3級・2級)

 個人的には会計的視点も仕入れていって良い時期と思います。

 ある程度、それほど重くはない法務の担当案件を一人で回せそうな軸ができたら、法律・法務実務領域以外の他の分野の勉強をしてみても良いと思います。その切り口から行くとまずは会計の分野が良いのかなぁと個人的には思います。契約審査を行うにあたっても、法的な視点以外に、会計的な視点で見れるようになると、より立体感が増して見えるようになりますし、他部署とうまくやる端緒にもなると感じます。会計の本はいろいろありますが、何だかんだ簿記からコツコツが一番良い気がしております*7

 

5.ITパスポートの本

 今後はどの業種でもITの最低限の知識は持っておいた方が良いと思います。

 会計に続けて勉強するのであればIT分野かなと感じます。製造業であっても、社内システムからビジネス商材まで、IT分野が絡まないものはなくなっていますし、そうである以上、法務業務でもIT分野に触れることは必然的に多くなっている印象です。加えて、IT分野は意識して勉強しないと言葉自体が何を言っているのかわからないこともあり、契約書に出てきたよくわからない言葉を「まぁ問題ないだろう…たぶん…」流してしまう可能性すらありうる分野だと思います。なので、ITパスポート試験で基礎的な知識を仕入れておくのは、今後を見据えると良いと思います*8

 

番外編.商事法務のメルマガ

https://www.shojihomu.co.jp/page/merumaga

 番外編として、商事法務のメルマガもおススメです。

 ニュースレターやメルマガ系は法律事務所のものなど数多くのモノがありますが、どれかを商事法務のメルマガかなと思います。官公庁からの情報や民間の情報などが整理されており、ざっとタイトル見ておくだけでも今のホットトピックが分かるように思います*9

 

以上

*1:2023年4月3日

*2:いわゆる有資格者ではない前提。

*3:1年目の法務担当者にお勧めする方も多い印象ですが、個人的には、1年目が読むには結構難しいことを言っている印象はあります。

*4:ただ、本書の切り口のみが唯一の切り口かは再考の余地はあるかもしれません。著者の仕事における業務改善等の視点が出てるような気もしなくはないので、自社にあった切り口を考えるのは必要かもしれません。

*5:物権法はまだ出てません。2023年4月3日現在。

*6:周囲を見ていると、法務業務の遂行にあたっては、まず「教科書」や「基本書」をしっかりと読んでからと意見に出会うことは多いです。ただ、ほんとにそういった書籍から入るのが業務遂行の効率性や優先順位の観点から適切なのかは立ち止まって考えても良いと思います。

*7:どの本が良いのかは本屋で見た方が良いと思う。

*8:どの本が良いのかは本屋で見た方が良いと思う。

*9:火曜日と金曜日に来るが、金曜日の夕方に来るやつは、今週もようやく終わった…とのアラート機能にもなります。