普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】一法務担当者視点で「変更不可の契約書です」と言われたときの対応について

 先日某SNSを見ていたら、契約審査を実施する際に予め「変更不可の契約書です」と言われたときの対応について話が出ておりました。実務の現場ではそういった場面に遭遇することもあり、それへの対応について改めて考えてみました。

 

1.ビジネスの解像度を高める

 実務上、交渉力の差やその他の諸条件次第で、契約書の内容を変更できないという状況はありうると思います。その場合、そういった状況を受け入れた上で何ができるかを考えざるを得ないですし、それが現実的な対応というのは多々ありうるところと思います。ですので、変更不可の契約書ですと言われたからといって、全く何もしないということはないように思います。

 では何をしていくのかというと、変更不可の契約書についてもリスクの指摘は行うべきというのがその一つの対応なのかと思います。契約書である以上、思いもよらないリスクが規定されている可能性もありますし、その内容についてビジネスサイドが気づいていない可能性も十分に想定されるので、このようなリスクの指摘に意味を見出すとしたらこういった観点からだと思います。

 加えて、こういった視点は法務の側からの視点のように思いますので、もう一歩言語化を進めてビジネスサイドの側からの視点に置き換えると、契約書の内容を理解することで「当該案件の解像度を高める」ということになろうかと思います。ビジネスサイドにて、契約書のある規定に気付いていないことで、当該案件の位置づけについて過小または過大な評価をしてしまっていることはあろうかと思います。例えば、知的財産権に関わる条項であれば、当該案件で生み出される知的財産権の帰属関係を把握していなかったことで、思いもよらない知的財産権の帰属をもたらすこともあり得るでしょうし、契約条件を変更できなかったとしても、そういう案件なんだと理解できていれば、過剰な期待をすることなく、当該案件で自社にとってビジネス上の過剰な不利益をもたらさない範囲での依頼しかしないこともできると思います。

 こういった「ビジネスの解像度を高める」という方向は一つの方向と思います。

 

2.ビジネスの条件を変える

 次に、想定するとすれば、変更不可の契約書という前提に疑いを投げかける、すなわち、契約書を変更する方向への方法を考えるという対応かと思います。

 「変更不可の契約書です」という発言があったとしても、この理由にはさまざまなものがありうると思います。取引先が大量にあり管理コストの観点から変更を受け付けていないパターン、ほんとは変更できるにもかかわらず社内や本社からの承認をとる手続が面倒であるため変更できないこととしているパターンなど、いろいろなものが考えられるところです。

 もちろん、当該案件の重要性と交渉力の有無、変更すべきと考える条項の内容等、ケースバイケースではあると思いますが、それを加味しても変更が必要と判断するのであれば、変更不可の理由を先方から聞き出し、それに沿った対応策を考えるというのは一つのありうる対応と思います。よく別途の覚書を締結するという対応方法も聴きますが、これは、おそらく、管理の効率性の観点から契約書本文には変更を加えられないから契約書の変更不可という際に考える対応策なのかと思います。

 こういった「ビジネスの条件を変える」というのも一つの方向かと思います。

 

 いずれにせよ、当該案件の位置づけと契約書の内容を見据えた上で対応方法を柔軟に考えていく必要があるのだと思います。

 

以上