普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】一法務担当者の私が「若いの」と仕事をする際に考えていること

 企業法務関連の仕事をしていると、どういうタイミングや文脈かはそれぞれだとしても、「若いの」と仕事をすることが出てきます。私も「若いの」*1と仕事をすることがあり、その関係性も、チームリーダーとして、単なるペアを組んでなど、いろいろな形で仕事をしてきたように思います。そこで、後から振り返ることもできるように、これらの経験を通して私なりに考えていることを言語化してみようと思います。

 

1.私自身が「若いの」であった頃

 私自身が企業法務の世界にてキャリアを積み始めた当初、それまでの社会人経験は短いながらもあったものの、いろいろとあったこともあり社会人としての基礎の基礎といったものがあったか否かといえばかなり疑わしいし、ましてやビジネスを見るスキルはゼロでした。

 そのような中、まさに私が「若いの」であった頃は、「センパイ」からの徒弟制のような形で仕事を身に着けていくことになりました。具体的に言うと、よくわからないまま「センパイ」の打ち合わせの現場に同席する、「センパイ」のメールすべてにccが入れられるから始まったように記憶しています。また、具体的な案件対応という観点で行くと、案件の取引先の情報、商流や支払条件などの細かい点について聞き取り等ができていないとかなり細かく詰められることも多かったし、ドラフトについてもかなり細かい点まで見られることが多かったように思います。そして、事業部への返事を行う際は、必ず、私自身が返すように言われましたし、また、実際はかなり手直しが入っていた書面についても私自身がドラフトしたかのように言って良いという環境ではありました。

 今から振り返ると、私自身は、このような「徒弟制」の中でスキルを身に着けてきたタイプだと思います*2

 

2.「若いの」と接する際に考えていること

 上記のように、私自身が「徒弟制」の中でスキルを身に着けていたこともあって、「若いの」には同じようにスキルを身に着けてほしいという想いはあるところです。かつ、教えることを通して自分の思考を言語化することにもなりますので、正直なところ単なる善意というよりは、「自分自身のため」という側面もあります。

 

(1)心がけていること

① 定番の書籍や官公庁のサイトを教えること

 まずは、定番の書籍や官公庁のサイトを教えることはやります。私自身、法務書籍のヲタクであることもあるので、自社ビジネスで関わってきそうな定番については教えるようにしています。もちろん、最終的には自分で書籍の情報を得るというのが重要なので、あくまで導入というイメージではあります。

② 書籍に載っていないノウハウを言語化して伝えること

 書籍に載っていないノウハウを言語化することは意識しています。例えば、売買契約であれば、売り契約であれば代金回収の観点を中心に見る、買い契約であればQCDを如何にして確保するかの観点を中心に見る、また、業務委託契約であれば、コンサル契約のような人的要素が前面に出てくる取引であれば問題が起きた後の契約規範による予防性より信頼ベースで問題がそもそも起きないようにはどうアプローチするか、など、「実務のノウハウ」を言語化して伝えることはかなり意識しています。

③ 「若いの」を観察すること

 観察は怠らないようにしています。例えば、ある契約に関連するセミナーを見ているようであれば、その契約で複雑そうなものがあれば誘ってみたりはします。また、私自身に何かを聴いてきた際には、問題意識も持っており吸収効率も高いでしょうから、その際には質問への回答に加えて、もう少し一般的なことを伝えることもあります。

 

(2)あまりやらないこと

① 細かい添削をすること

 これはやれるならやった方が良いとは思っていますし、私自身もこれによってスキルを身に着けてきた側面はあります。ですが、他の人もよくやっていることなので、あえて私がやる必要はないだろうと考えて、あえてやっていないという形になります。いろいろ教えても消化不良になると思いますので。

② 仕事以外の場面で積極的に関わること

 私自身がお酒を飲めないというのが多分に寄与している面はありますが、正直、雑談は置いておいて、職場で仕事関連で関わって仲良くなるという形での関係の築き方はしていません。私自身は、関わる中で、より成果を出せるようになってもらいたいこと、そのためにいろいろな人と信頼関係を築けるようになってほしいことを根底には考えていますが、その限りであれば仕事の場での関りで十分かなと考えています。

 

3.さいごに

 これからの時代は不確実性の高い時代になってくるでしょうし、各人でいろいろな人生を選び取っていく傾向が強くなっていくのだと思います。「若いの」がそのまま法務としてのキャリアを歩みたいのか、ビジネスサイドへ行きたいのか、他社での活躍を望むのかはわかりませんが、少なくとも仕事で関わった以上は、その一助になれるようにとの意識ではいるところです。

 

以上

*1:私の場合、「若いの」と表現する際は、職務遂行という切り口から、私自身が何らかの影響を与えた方が良いと考えられる対象を指しています。ですので、年齢も一回り上、同年代、一回り下と様々な人をハイブリッドした集合体を「若いの」と形容していることが多いです。

*2:ただし、これはコロナ禍前のフル出社の時期にキャリアの初期を過ごした私であるから経験できたのであって、フルリモートやリモートと出社のハイブリッドの中ではこのような「徒弟制」でのスキル醸成は難しいような気もします。そういう意味では、私の「若いの」であった頃のスキルの身に着け方というのは、部分的にはまだしも、全部が再現性のあるものとはいかないのだと思います。