普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務 2021年2月号 感想

 ビジネス法務2021年2月号を読みました。

ビジネス法務 2021年2月号[雑誌]

ビジネス法務 2021年2月号[雑誌]

  • 発売日: 2020/12/21
  • メディア: 雑誌
 

 

 本号の中で気になった記事と言えば、「バイデン新政権下の主要政策と日本企業のとるべき対応」(河村真紀子・鵜澤圭太郎、前掲12頁)でした。

 内容については、バイデン政権下での経済産業政策、法人税制や人事労務に関する政策とそれぞれの日本企業への影響が記載されておりました。

 同テーマについては、速報性の高いものですし、また、今後の現実のニュースを踏まえながらウォッチしていく必要があるのでしょうが、「法律雑誌」という枠組みでの中でこういった特集が組まれる背景といったものを少し考えてみたいと思います。

 「法律雑誌」に期待するモノと言えば、まずは、やはり「法律知識」になると思います。具体的には、既存の法令の解釈や実務的な運用、裁判例に関する情報、新規の法令の解釈等といったものになってくるかと思います。こういった知識は日々の業務をこなす上でのベースとなるものですし、むしろ、こういった知識がなければ、事業部門に対して必要なリーガルサービスといったものを提供できないとも言えます。

 こういった「法律知識」と比較すると、「米国政府の政策動向」というのは少し質の違う情報のように感じます。しかし、使い古された言葉ですが、ビジネス側面から見れば、事業自体のグローバル化というのはどの業態においても避けることはできないでしょうし、そうだとすれば、他国の政策動向というものに目を配る必要は出てきます。その上で、政策動向に留まる上では不確定性の大きい抽象的な情報に過ぎないかもしれませんが、いずれ法令として具体化された際には、自社のビジネスにダイレクトに影響が及ぶ可能性もあります。その結果、予定していた取引はもちろんのこと、既に「契約済み」の取引に何らかの影響を与え、想定外のコストアップといったことも考えられるところです。

 こういった不確定性に基づく取引に与える影響のリスクマネジメントといえば、まさに法務部門が扱う「契約」でのリスクマネジメントが活きる場面の1つではあろうかと思います。例えば、予期せぬ法令変化であれば法令変化に基づくリスクをどちらが分担するのかといった条項、政変や戦争といったカントリーリスクが具体化するような場合であれば不可抗力条項等といったものが関わってくるかと思います。

 これらを前提に考えてみると、日頃、不可抗力条項といったものをレビューする際に、どこまで諸外国の政策動向やカントリーリスクといったものを「具体的なレベルで」考えているでしょうか。単なる差分比較となっていないでしょうか。実質的なリスクマネジメントに踏み込めているでしょうか。

 こういったことを考えていくと、「法律知識」だけではなく、「諸外国の動向」といったものも、自身のリーガルリスクマネジメント力を磨くためには重要な要素の1つとなることが思い知らされます。

 今後は、リーガルリスクの多様化により、様々な情報を入手する必要がありますし、それを取得するための情報ソースというのも多様化していくのかもしれません。

 

以上