普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2020年11月号 感想

 Business Law Journal 2020年11月号を読みました。

 

 本号の特集は、「失敗に学ぶ個人情報保護対応」というものでした。

 実務の中で数多く出会うことになるであろう「失敗事例」。「失敗事例」には、自社における失敗事例他社における失敗事例の2つがありうることかと思います。前者については、いわゆるナレッジマネジメントとしてその活用法が議論されるところです。これに対し、本号の特集は、後者の他社における失敗事例の活用法を示してくれています。

 他社の失敗事例をどのように活かしていくか。日々、様々な媒体におけるニュース等に接していると、同業種又は異業種の他社の失敗事例を多々聞くことがあるかと思います。そのような情報に触れた際、我々がとることができる態度としては、そのような事例もあったのかと何となく触れてみるそのような事例を詳しく調べて何が問題であったのかを分析してみる他社事例の分析結果を自社に当てはめてみて自社の業務改善に活かしてみる、といった諸レベルの向き合い方があるように思います。

 理想論としては、最後の他社事例の分析結果を自社に当てはめてみて自社の業務改善に活かしてみるといった行動をとるべきなのでしょうが、いざ、これを行おうとしても中々難しい。何から始めれば良いかわからない。どういった視点で行えばわからないとなって躓くことが多いかと思います。

 そのような視点から見た場合に、本号の特集の切り口は、我々が他社事例を自社に活かす際の1つの軸を与えてくれるように思います。

 本号の特集記事を見てみますと、個人情報の利活用における失敗事例とその分析*1個人情報の保護における失敗事例とその分析*2グローバル案件における失敗事例とその分析*3という3つの記事となっています。個人情報保護を業務レベルで考えた際の大きな区分として、「利活用」における問題と「保護」における問題という区分で考えることは重要な切り口ですし、また、「国内」における問題と「国外」における問題という区分で考えることも同じく重要な切り口かと思います。このように、本号の特集は、個人情報保護の問題を考える際の「軸」に沿って他社事例を位置づけているというのが特徴の一つになっていると思います。

 自分自身で他社事例のニュース等に接したとき、こういった「軸」を持って当該ニュースを見れているだろうか、もし見れていないのであれば何が足りないのだろうか。そのような他社事例を見る際の情報を整理する「軸」の重要性にと改めて気づかされました。

 

以上

 

*1:板倉陽一郎、前掲20頁。

*2:影島広泰、前掲26頁。

*3:田中浩之・根橋弘之、前掲32頁。