【法務・アニメ】帰ってきた・法務に役立つかもしれないアニメ10選
こんにちは!
ちくわと申します。
本記事は、2020年のLegalACの1つとして書きました。
さて、2020年は、法務×アニメの可能性を強く感じた年でした。
Twitterにおいて、#ジブリで学ぶ法務、のタグが流行ったことなどは、まさにその象徴的な出来事かと思います。また、昨日の@ahowotaさんによるLegalACの記事では*1、#経営アニメ法友会、も設立されるなど、ますます、法務×アニメの可能性を探求する素地が出来上がりつつあります。
そのような中、私としては、昨年に引き続き*2、法務×アニメの可能性を探求すべく、法務に役立つかもしれないアニメを選出いたしました。
それでは、再び、私の独断と偏見に満ちた「法務に役立つかもしれないアニメ10選」をお届けします。
● 法務に役立つかもしれないアニメ10選
① キャプテン(1980年、1983年)
・名作ド根性系野球アニメ
・名門青葉学院から墨谷二中に転校してきた谷口タカオ、鬼のような過酷なスパルタ特訓により自身とチームを強くしていく、そして、その後に続く、丸井、イガラシ、近藤といった歴代キャプテンへとその精神は受け継がれていく熱い青春物語。
・本作でも印象に残る回と言えば、22話にて、イガラシがキャプテンになった後、壮絶なスパルタ練習の果てに、結果としてチームメイト松尾が怪我をし、保護者等からのクレームも受け、春の選抜大会を辞退せざるを得なくなった回でしょう。
・法務組織を強くする、という言説をよく聞くことがあります。しかし、組織である以上、「持続可能性」というのは強く求められると思います。自分が異動・転職するまでの間だけ機能すれば良いという意思決定は不健全と思います。本作のエピソードは、そのような中での「変化」を考える際に、「効果」だけではなく、「持続可能性」という観点から見た場合の「成立条件」とは何かを考えさせるモノです。皆さんは、何かを変えようとしているとき、「何を」検討していますか?
② 超時空要塞マクロス(1982年‐1983年)
・元祖歌姫アニメ
・突如として地球へと落下してきた巨大な物体である「マクロス」、しかし、実は、それは異星人によるブービートラップであり、否応なく異星人との戦争に巻き込まれていく人々の様子が描かれる物語。「歌」がキーとなる。
・TV版マクロスの印象的なところといえば、28話以降で、ゼントラーディ軍との主たる戦いを終えた後の地球の様子が描かれる回が続くことでしょう。この地球編における敵のようなポジションとして描かれるカムジンというキャラがおりますが、同キャラの死に際の言葉がこれまた気になるものでして、「後で文化しようぜ」というものになります。
・法務部門で仕事をしていると、事業部門の扱う言葉の中でさっぱり意味が分からない言葉はないでしょうか。これは逆もしかりで、事業部門にとっては法務部門の扱う言葉の中でさっぱり意味が分からない言葉もたくさんあります。「後で文化しようぜ」なんて、ぱっと見、意味がわかりませんよね*3。このような場合、皆さんはどうしているでしょうか。上記マクロスシリーズでは、「歌」というものがキーワードになるわけですが、我々には「歌」という武器はない以上、「言葉」を尽くしてコミュニケーションをとる必要があると思います。しかも、根気よく粘り強く。法務部門と事業部門の相互理解といったテーマはいろいろと語られているところですが、マクロスの中に意外なヒントがあるかもしれません。
③ 名探偵ホームズ(1984年)
・犬の方のホームズ
・主人公ホームズと助手のワトソンが、モリアーティ教授とその部下たちが織りなす悪事を暴いて、大活躍するという作品。モリアーティ教授による謎の発明品が出現するなど、本家本元の推理小説とは全く違う冒険活劇。あの宮崎駿も監督に名を連ねる。子供にオススメ。
・主人公ホームズの活躍は、早速、1話にて描かれており、乗り込んだ民間船が海賊船から襲われるなり、機転を利かせたはったりかまして「時間稼ぎ」を行います。
・法務の仕事をしていると、「正論」述べても話が通らないといった状況はありませんか。その理由は、組織が本当に不健全、根回しが足りない等の理由もあるかもしれませんが、今はまだそのタイミングではないといったものもあるかもしれません。例えば、それまで進まなかった色々なモノの電子化がコロナ禍により一気に進んだというのはその一つですし、日々の交渉の場面でも前提事情の変化が前に進むために重要な点となっていることもあります。我々も、主人公ホームズのように、押してダメなら引いてみよのごとく、あの手この手を繰り出してみる、ダメなら待つというのも良いかもしれません。
④ 機動警察パトレイバー ON TELEVISION(1989年‐1990年)
・現実の警察庁とも何度もコラボしている名作
・ロボットテクノロジーの発達に伴い登場した汎用多足歩行型作業機械(レイバー)の登場に伴い、様々なレイバーを用いた犯罪も行われることとなった。このようなレイバー犯罪に対抗するために警視庁に設立された「特科車両二課中隊」(特車二課)の日常を描いた作品。
・30話にて、シャフト・エンタープライズ・ジャパン社の企画7課内海が、同社の開発したレイバー「グリフォン」は、現行のレイバーフォーマットと異なり、また、コストが高すぎて売れないとの言説に対して、市場での競争力の高い篠原重工社製のオペレーションシステムをセットで販売すれば、商売として成り立つというような返しをするシーンがあります。
・法務の仕事をしていると、様々な知識が必要になってきます。しかし、すべてに全力でのインプットをしようとすると、どう考えても、身体と時間が足りません。そんな際、自分の職務という観点から、法令の趣旨や要件も含めて詳細な理解をしておく事項、あの本やガイドラインを見れば対応できるというレベルで知っておく事項、何となくこんな話あるなと頭に入れておく事項等、知識にグラデーションを持たせて整理しておくのはありうる対応かと思います*4。例えば、本作の上記シーンであれば、ん?競争力ある製品のセット販売?これは競争法の観点から大丈夫なのか?、とりあえずあの本とあのガイドラインを調べるか、レベルの整理があれば、何とか、その場で内海課長に対しても、さらなるヒアリングができるかもしれません。知識を仕入れる「目的」は考えてみても良いかもしれません。
⑤ ママレード・ボーイ(1994年‐1995年)
・恋愛アニメといえばコレ
・主人公光希は、ある日突然、両親から、旅行中に知り合った松浦夫妻とお互いパートナーを交換することになったと告げられる、そして、ともに暮らしていく中で、松浦夫妻の息子である遊に惹かれていくが、二人の生い立ちには「ある謎」があり・・・という物語。
・本作は、何といっても、OPの「笑顔に会いたい」が名曲であることに疑いはないでしょう。歌詞、メロディー、OP映像等いずれも、高クオリティであり、本作の人気につながった要因の一つではないでしょうか。
・そうしたOPの中に、「甘くて苦いママレード」という歌詞があります。この言葉を見たときに皆さんは何を思い浮かべますか。おそらく、法務関係者であれば、①「甘くて苦い」という表現は矛盾しているのではないか?、②「甘い」や「苦い」といった表現は曖昧であり、成分等で品質を特定する必要があるのではないか?などといった考えがまずもって思い浮かぶのではないでしょうか。法務の視点で世の中を眺めてみると、面白い発見があるかもしれませんね!
⑥ キノの旅(旧作2003年、新作2017年)
・寓話的な旅アニメ
・主人公キノは、一つの国に3日までしか滞在しないとのルールで様々な国を旅人(傍観者)の立場で回っていきます。
・本アニメ5話「レールの上の三人の男」という回は非常に寓話的な話です。主人公キノが旅をしていくと、ある所で長いレールがあり、一人の男がそのレールを磨いていました。その男は会社の命令で50年間ずっとレールを磨いているようです。次に、そのままレールのしばらく先に行くと、今度は、一人の男がレールを解体していました。その男は会社の命令で50年間ずっとレールを解体しているようです。さらに、そのまま先に行くと、今度は、一人の男が新しいレールを設置していました。その男は会社の命令で50年間ずっと新しいレールを設置しているようです。そしてその先も・・・。
・みなさんは、自分の仕事の成果物が後工程でどのように扱われているか把握していますか?はたまた、みなさんは、自分の仕事の成果が経営・事業にどのような影響を与えるか把握していますか?レールの上の男たちのように、意味のない仕事を繰り返していませんか?*5*6
⑦ 電脳コイル(2007年)
・身近なところの名作SF
・「電脳メガネ」というウェアラブルデバイスが社会に普及した頃のお話。金沢市から大黒市に引っ越してきた主人公ヤサコは、同級生との出会いを通して様々な不思議な出来事に遭遇していく。
・本作の特徴と言えば、2026年ということもあり、まさに、ITテクノロジーの発達した現代社会の「ありそうな近い未来」を描いている点かと思います。他のSF作品と異なる大きな特徴としては、このような現代社会の近い延長線にある作品であることがあげられるでしょう。
・2020年LegalACの記事内にて@ahowotaさんが、
法務は会社内の「社会に対して開けた窓」として、会社内の外と中をつなぐ役割を果たす必要がある
と述べられておりました*7。市場と直に接することが多いのが事業部門であれば、法務部門は社会と接することでその価値を還元していけば良い。その際の方策として、アニメ等の作品で今後のありうる社会の姿を想像してみる、というのはありうる方法かもしれません。特に、本作は、ウェアラブルデバイスやサイバーセキュリティーといった側面からも、いかにも近い将来ありそうな世界設定かと思います*8。皆さんも、アニメで想像体験、なんてどうでしょう。
⑧ STEINS;GATE(2011年)
・このアニメは本当にすごいSFモノ!
・厨二病の化身のような存在である主人公岡部倫太郎、彼を取り巻く個性豊かなラボメン達、そんな彼らが「ある一つの発明」をしてしまったことで、世界の歴史を変え、世界から狙われる、そして最後には・・・と、様々な伏線の中でストーリーは進行していく。いわゆるタイムリープもの。
・本作内で、主人公岡部倫太郎は、幾度となく、世界を変えるためにタイムリープを繰り返すわけですが、A⇒Bといった条件関係が非常に複雑に絡み合い、一つ一つ解きほぐす必要があるわけです。
・ 法務部門において、重要なスキルの1つとして、「伝える」というものがあるかと思います。もちろん、「わかりやすい言葉」を用いるというのは一つの方策です。しかし、それだけで、思考が整理されるかというと、不十分な場面もあります。そんな時に役立つのが、「図表化」するというものです。例えば、フローチャートやグラフといった説明手法を皆さんは普段の業務でどのくらい使っていますか?本作の主人公岡部の直面した課題のように、皆さんも「図表化」を通して思考が整理され、より良く「伝える」ことに繋がるかもしれません。
⑨ ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2018年)
・泣ける超大作
・「戦場で戦うこと」知らずに生きてきた主人公ヴァイオレットが、自身の大切な人から最期に聞かされた「愛してる」の言葉の意味を知るために、代筆業を通して様々な人と触れ合い、人の「気持ち」を少しずつ理解していくも物語。
・本作屈指の回といえば、第10話であろう。一人の依頼者からの依頼された50通もの手紙を書き続ける主人公ヴァイオレット、その一通一通に心を込めて書くからこそ、読む人の心、そして我々視聴者の心を動かしていく。
・ 法務の立場で依頼されたモノを書くというと、その主要なものとしては「契約書」があげられるわけですが、皆さんは、日々、契約書の審査に追われているのではないでしょうか。その際、ふと、契約書を「処理する」「捌く」といった言葉を使ってしまっていませんか。契約書は「処理」したり「捌く」ものなのでしょうか。神は細部に宿るではありませんが、こういった小さな言葉遣いからその人の無意識における仕事への向き合い方はわかりますし、また、事業部や周りの方も見ていることが多いように思います。自分が見ているのは、「事業のリスク」なのか、単なる「契約書のリスク」にすぎないのか、普段あるべき論としてはきれいなことを語ることがあっても、追われているときによろしくない対応になっていないか、いついかなる時も仕事に向き合う主人公ヴァイオレットの姿を見て、自身への戒めとともに、自身を振り返るきっかけともなります。
⑩ 劇場版SHIROBAKO(2020年)
・2020年におけるNo1法務アニメ
・映像業界で用いられる作品が完成した際に手渡されるビデオテープが入った「シロバコ」、そんなタイトルの通り、一つのアニメーションを作る際の様々な担い手の葛藤や挫折、それでも前に進もうとする様子を描いた群像劇。
・本作は、アニメ版に続く時系列を描いたものであり、主人公宮森あおいが属する武蔵野アニメーションには「いろいろなこと」が起きます*9
・契約書の記名捺印のない契約書に、皆さんは出会ったことはありますか?当該契約書の有効性についてはどう考えればよいのかと悩んだことはありますか?なんと、本アニメのクライマックスともいえる場面では、主人公の宮森あおいが、記名捺印のない契約書の有効性についてその根拠と共に激論を交わすシーンが登場するんです。昨今、いろいろな視座から、契約書の記名捺印については再検討が加えられていますが、アニメの中でも登場するテーマなんですねぇ・・・。
なお、以下のようなTweetにおいても、本アニメの可能性が示唆されております。
法クラの皆様に、劇場版「SHIROBAKO」を強くオススメしたいです。
— QB被害者対策弁護団団員ronnor (@ahowota) March 1, 2020
「もはやこれは、お仕事アニメではない。法律のお仕事アニメだ!」
#musani #SHIROBAKO
ジブリで法務を学んでほしい。SHIROBAKOでも学べるよ。
— じゃんく@新作執筆中 (@jank_2525) September 23, 2020
● おわりに
上記のように、アニメ×法務の観点からいろいろと考えられないだろうか、ということで、いろいろと書かせていただきました。
皆さんも、自分の趣味に関して、法務の観点から考えてみませんか?意外と何か見えるものがあるかもしれませんよ。
次回は、関原秀行(@Hide_Sekihara)さんです。
よろしくお願いします。
以上
*1:https://ronnor.hatenablog.com/entry/2020/12/05/000257
*2:昨年書いたものは↓コチラになります。
*3:マクロスシリーズではこの言葉も意味のあるものになりますので、気になる方はご視聴を。
*4:本年のLegalACにおける@dtk1970さんの記事はそういう視点から参考になる記事かと思います。
https://dtk1970.hatenablog.com/entry/2020/12/03/230000
*5:このような点については、@kataxさんの「こんなときだから「法務の存在意義」を考えてみた」にて検討が加えられており、非常に有意義です。
http://katax.blog.jp/archives/52848448.html
*6:「意味があるか」という点に関係がある事項として、「事業を理解する」という言葉も非常にモヤっとしたものであり、おそらくこれだけ言われても、自分の行動に跳ね返ってくるにはどうしたら良いのかは、わからないように感じることもあると思います。例えば、ヒトモノカネの把握が大事とはよく聞くことですが、これが自分の日々のアウトプットとの関係でどのように活きるのかに関しきっちりと説明できるでしょうか、ということです。個人的には、何を目的に、何を軸に、何をもってといった辺りもセットで考える必要があると思います。事業に自分が関わるのは何のためなのか、QCD(F)(SE)の観点で見た場合に事業はどんなプロセスを歩んでいるのか、自分が使えるリソースは何なのかといった諸点です。こういうことも考えながら、自分が関われる「場面」と「深さ」の「優先順位」を考えていきたいです。なお、「事業の理解」という視点では、@seko_lawさんの「プロダクトカウンセルって何だろう?」がわかりやすく思考を展開されています。
https://www.seko-law.com/entry/ProductCounsel
*7: #経営アニメ法友会 設立宣言&ニジガク2話に見るアニメの知見の法務への活用概論( #legalAC )
https://ronnor.hatenablog.com/entry/2020/12/05/000257
*8:実際に次のような記事もあります。「アニメに潜むサイバー攻撃 空想と現実の狭間に「電脳コイル」で考える近未来の脅威 」(文月涼、IT media)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1811/30/news008.html
*9:以下の同人誌に「劇場版SHIROBAKOは企業法務に役立つのか!?」を寄稿させていただきました。