普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務2020年7月号 感想

  ビジネス法務2020年7月号を読みました。

ビジネス法務 2020年 07 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2020年 07 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: 雑誌
 

 

 本号の特集として、日本企業における「企画法務」の挑戦というものが掲げられておりました。

 「企画法務」とは何だ、とこの特集名称を見たときは感じたものですが、読んでみると、法務部門内における組織自体の生産性向上や業務最適化に向けた取り組みを企画・立案する業務を示しているようです。米国においては、1990年代よりこのような専門組織が置かれるに至っているようです。日本においては、どのような企業に設置されているのかは定かではありませんが、本号の特集を見る限りでは、総合商社等の大規模な法務部門内に設置されているようです*1

 それでは、具体的に何をしているのかという点ですが、組織によってその職務内容はまちまちになっているとは思いましたが、大要、業務改善、IT戦略、ナレッジマネジメント、人材戦略、財務戦略、外部発信等を中心にした職務を担っているように見受けられます。

 現状、様々な媒体等で、法務組織をどうしていくのかといった諸点が議論されているように思いますが、議論はしてみるものの、実際にそこで議論されている「哲学」を具体化するためには、様々なリソースが足りていないように感じます。その原因としては、そもそもの人的リソースが足りていないということもあるでしょうし、法務部門の職務の興味関心が具体的なビジネス及びそこでの法的リスクに向かいがちであることから、組織づくりに目が向いてきにくかったというのはあるかもしれません。そういう意味では、このような「哲学」を具体化していくことをミッションとして、法務部門に「企画」部隊を設置することは意義はあるのではないかと感じるところです。

 しかし、本号で取り上げられているような大規模な法務部門ならまだしも、小規模な法務部門においては、こういった部署を設置することは中々厳しいのではないかと感じます。そうだとすれば、個々のゲリラ戦に頼った組織づくりにならざるを得ない面もあるのではないか、むしろ、そちらの方が現実的な選択肢になってしまうのではないかとも感じるところです。

 いずれにせよ、組織である以上、「持続可能性」というのが重要になってくると思いますので、本号に取り上げられた「企画」部署の設置という手段をとるにせよ、それ以外の別の手段をとるにせよ、実際の組織づくりの議論はまだまだ緒に就いたばかりなのではないかと感じます。未だ哲学的な議論が先行している段階のように感じます。

 このような「企画法務」の試みがどうなるのかは注視したいところです。

 

以上

*1:本号の特集においては、丸紅、三菱商事、LINEが取り上げられておりました。