普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2019年10月号 感想

BUSINESS LAW JOURNAL 2019年10月号を読みましたので、備忘録を書いておきます。

Business Law Journal 2019年 10 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2019年 10 月号 [雑誌]

 

 

1.法務部門CLOSE UP 味の素 法務部(前掲14頁)

 ・毎号特集が組まれている法務部門のCLOSE UP記事です。今月号は、日本を代表する大企業である味の素さんの法務部門が特集されております。

・従業員数(連結)3万4504人、グループ会社数144社(いずれも2019年3月末時点)に対して、法務部門の部員数は19人となっています。この数が多いのか少ないのかは、自分としてはよくわからないです。

・業務内容は、契約審査5割、プロジェクト関係3割、ガバナンス関係のサポート1割、食品表示や臨床研究の定期的な法的助言1割となっています。いわゆるコンプライアンス業務が見当たらないところをみるに、法務部門以外で担っているということなのでしょうか。

・本記事において着眼した点としては、

今の法務部には、法科大学院修了者や弁護士資格の保持者もいれば、社内公募制度を利用して営業部門から異動してきた者のように、法律のバックグラウンドを持たない部員もいます。(前掲15頁)

 という点です。

 法務部門の人員構成をどのようなものにするかというのは悩ましい問題の一つであり、例えば、有資格者を含めたいわゆる法務純粋培養の者のみで構成する方法もあれば、営業部門からの異動者や新卒から法務部門にいる者等の多様な人材で構成する方法もあるかと思います。

 私自身はペーペーですので、いかなる組織が良いかを語る実力も経験も有していないので、この点については一旦留保します。

・それよりも、多様な人材がいることで私が日々感じているメリットを述べたいと思います。

 まず、契約審査を例にとると、モノの売買に関する契約であれば、

 ①QCDを確保する(QCDにおいて余計なコストがかからないか)

 ②その他の法的リスクが生じないか

 ③法的解釈の疑義が残る表現はないか

 ④てにをはに問題はないか

 ⑤証明責任(証明責任で優位性が取れないならば証拠の偏在をカバーできる条項)

 といったあたりを審査することになるのではないかと思います。ほんとはもっと類型化できるのだと思いますが、現時点での私ではこれが限界です。

 この中で肝になる項目としては、私自身としては、①であることが多いのではないかと思います。この①というのは、当該案件においてQCDのどの要素を差別化要素としたかということと密接に関係してくるかと思います。そして、この要素の仮説を立てること、ヒアリングにてうまく聞き出すこと、QCD関連の条項を創造すること等においては、営業部門からの異動者の経験値が生きてくる場面になるのではないかと思います。法務純粋培養者が見えないものを見えている人が部門内にいるというのは非常に心強いというのが私の感じるところです。やはり、それぞれの強みを活かした職務遂行が大事ということですね!!

・また他に気になった点としては、

会社の枠を超えて、北米地域のインハウスローヤーをマネージするバーチャル組織を作り、トップに北米ジェネラル・カウンセルを配置して、リソースを効率的に活用できる仕組みにしました。 (前掲17頁)

です。この「バーチャル組織」てのはどういうものなのでしょうか。うーん、また考えないとダメですね・・・。

 

2.【特集】法務が知っておくべき広告・キャンペーンの最新実務 審査フローの整備によるリスクマネジメントの効率化(野崎雅人・井上安見・平池明日香、前掲59頁)

・私自身は、広告審査というのをほとんど経験値がなく、広告審査という切り口からの実務的な問題意識が醸成されていないため、本特集は新しい知識を得るという視点から興味深く読ませていただきました。

・本記事は、グリー株式会社の実務的な視点を語ったものになります。

・本記事で気になった点としては、広告の内容の審査の観点で、

これらを網羅する審査基準やガイドラインを用意しています。ガイドライン等では判断しきれなかったものが法務に回ってくるという流れです(前掲60頁)

 という点です。

 リスクマネジメントの仕組みを作る際には、①中央集権的に法務部門が全案件に関与していくパターン②事業部門側にある程度の自治権を認めるパターンの2つがありうるかと思います。本仕組みのようなガイドライン整備方式というのは、この②にあたるものなのでしょう。もし②の方式をとるとすれば、法務部門の役割は個別審査というレベルから抽象度を一つ上げて、ルール自体の適法性を監督する事後的なモニタリングに軸足を置くという形へと変化していくことになるかと思います。

 これ自体も具体的な仕組みをどう構築するかは、ケースバイケースだと思いますし、本記事においても、

どのレベルの審査基準やガイドラインを整備するかは、各社の組織体制や現場の担当者の経験値等によっても異なるでしょう(前掲60頁)

とあるところです。ここから読み取れることとすれば、では現場の担当者の経験値=リスク感覚の成熟度はどのように測るのかという課題ですね。この対処法は、未だ自分自身の中でも試行錯誤中なので、日々鍛錬していきたいと思います!

 

本号も勉強になりました!