普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務2019年10月号 感想

ビジネス法務2019年10月号を読んだので、備忘録です。

ビジネス法務 2019年 10 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2019年 10 月号 [雑誌]

 

 

1.時間・人員の不足を戦略的に克服する 契約業務プロセスの構築齊藤友紀・前掲24頁)

・本号の大きな特集の一つが「一人法務」の心得というものでした。

・私自身は、「一人法務」ではないのですが、「一人法務」という切り口から見た「法務」の捉え方というのは、「多人数法務」に対しても応用が利くのではないかと考えましたので、その視点から少し考えてみたいと思います。

・本記事においては、「契約業務のデザイン」という見出しの下で、業務フローの把握・整備契約に関連する情報の収集契約審査・契約書の起案という3つの視点を掲げています。

・私個人としては、この中で、契約に関連する情報の収集という段落が非常に興味深く読むことができました。理由としては、法務業務におけるアウトプットを生み出すものの主たる源泉は「情報」であるというのが、自分自身の法務業務を行うにあたっての大きな指針となっているからです。

・本記事では、情報収集の必要性に関し、

少なくとも、契約審査への着手より前に、取引の内容や背景、これまでの経緯を、契約審査を円滑に進められる程度には把握しておくべきである。また、取引の重要性が高い場合には、必要に応じて事業担当者を支援し、もって契約の内容をコントロールするため、取引に関する情報を収集する時期を早め、収集する情報の粒度を上げることが望ましい。(前掲25頁)

と述べております。この内容は、私も強く共感するところです。私なりにこの内容を実践するために必要なスキルを考えてみると、①大きな視点で見たときに自社のビジネスはどこに向かっているのか②事業部門担当者との人的コネクション③自社ビジネスの推進に必要な法的スキル、といったものがあげられると思います。

 ここでは情報「収集」に視点があてられていますが、「一人法務」という枠を超えて、「多人数法務」ということになると、「収集」した情報を「整理」し「共有」するというプロセスが必要になってくると思います。そうだとすれば、ここで課題として考えられるのは、

 ● 「整理」はどのように行うのか

 ● 「共有」はどのように行うのか

といったものになると思います。

 端的に、なぜ「収集」した情報を「整理」し「共有」する必要があるのかと考えると、私自身が普段の業務にて意識している視点としては、①自分自身の今後の業務におけるノウハウとするため②現時点の他の部員に対してノウハウを共有するため③将来における他の部員に対してノウハウを共有するため、の3つの視点を意識しております。その上で、どう整理するのかと考えると、最もシンプルなのは、自分自身の思考の構造と(クラウド上での整理を前提として)整理するフォルダの階層構造を合致させることではないかと思います。と、簡単に書くには書いたのですが、実際に日々の業務で実践しようとするとこれが中々難しく、その原因は自分自身の思考の構造がすっきりとしていない点にあると考えらえるので、思考をすっきりさせるためにも「整理」という切り口をうまく利用するのは非常におすすめです!

 また、「共有」という切り口も非常に大事なのですが、これもまた、「何」を共有するのかというのが非常に悩ましい問題になります。法務部門においてよくあげられる課題として、事業部門の情報が乏しいというものがあると思いますが、これも、過去及び現在までに「収集」した情報を適切に「共有」してみると、案外情報は持っているということがありえます。

 いわゆるリーガルテックは、この収集した情報を「整理」し「共有」するというプロセスに潜む課題を解決する一つの策と思いますので、うまく使っていき、法務のアップデートを行うことが大事と最近は感じている次第です。

 ・また、本記事では、情報収集の方法に関し、

現場との近さは法務担当者の最大の強みの1つである。 これを背景とした自社の事業や同僚、取引先への深い理解があるからこそ、契約の事業上の意義や重要性はもちろん、そこに表立っては書かれていない当事者の意図を推し量ることができ、外部の専門家とは質的に異なる価値を会社に提供することができる。(前掲25頁)

と述べております。この中では、特に、「外部の専門家とは質的に異なる価値会社に提供」というのが非常に大事な視点になってくるかと思います。

 私は、以前、Twitterにて、

とつぶやいていたのですが、今の自分が意識している「外部の専門家とは質的に異なる価値会社に提供」というのはこの視点になっています。具体的には何なんだというのは、日々の試行錯誤の中で考えていきたいところです。言うは易し行うは難しですね・・・。

・本記事は、一人法務を対象としたものではありますが、多人数法務においても十分に応用が利く内容になっていますので、読まれること非常にオススメです!!

 

2.法務部に伝えたい ”実効的”内部監査のコツ 第5回 グループ会社は同じ会社?(樋口達・前掲124頁)

・本記事は連載物になっておりまして、「監査」という視点の重要性を教えてくれる記事になっております。特に、本号では、「グループ会社」の監査という視点を掲げています。

・本記事で大事なのは、

グループ会社とはいえ、親会社とは別会社である以上、企業文化や業務フロー、働く人々の意識などさまざまな点で異なる可能性があります。(前掲・126頁)

に尽きるのではないかと考えます。特に、多角化した事業を営む企業の法務部門になってくると、よりこの課題は顕著になってくるのではないかと思います。

・まず、私自身は、法務部門において「監査」という視点を持つことは非常に大事なことと思います。リスクマネジメントのPDCAは何かと考えるに、規定の策定⇒規定の運用⇒規定及び運用状況の確認⇒規定の修正、というのがオーソドックスなものになろうかと思います。そうだとすれば、このPDCAをしっかりと回すために、リスク管理の主管部門である法務部門としては、監査=Cを意識した上での規定の策定を行うべきであると思いますし、実際に監査を行う部門との連携も実務上は推進していくべきなのではないかと思い、日々の業務に励んでいるところです。

・1.の記事とも関連しますが、「グループ会社」の「情報」ということになると、一段とその情報収集が難しくなってくると思います。特に、多角化した事業を営む企業の法務部門の方であれば、なおさらこの課題に直面するのではないでしょうか。

 これに対する解というのは私自身も試行錯誤中なのですが、一つは、法務部門⇒グループ会社の直接の情報収集ラインを中心に据えるのではなく、法務部門⇒事業部門の管理部門⇒グループ会社という間接的な情報収集ラインを中心に据えるべきなのではないかというものです。直接の情報収集ラインを構築し、かつ維持することができればいいのですが、法務部門のリソースも限られていますし、特に、多角化した企業であればなおさらこの方法は厳しいのではないかと思います。それならば、むしろ、ある種のリスク管理アウトソーシングということで、法務部門⇒事業部門の管理部門の連携を深めた上で、事業部門の管理部門にハブ的な役割を担ってもらう方が良いのではないかと思っております。特に、法令や全社規定の改定があった場合やグループ会社のビジネス環境に変化があった場合などは、このハブ的な位置づけの部門により相互の情報共有をなすことが、よりスムーズなリスク管理に繋がるのではないかと思っています。

 

本月号も勉強になることばかりでした・・・。頑張ります!!