【法務】ビジネス法務2019年9月号 感想
ビジネス法務2019年9月号を読みましたので備忘録を記載しておきます。
1.「管理職に知ってほしい パワハラにならない部下の叱り方・接し方10箇条」(小鍛冶広道・前掲38頁)
・ビジネス法務9月号の特集1は、「会社・社員を守る”パワハラ”への法務対応」となっています。
・他の記事がいわゆる「パワハラ法制」の概要や裁判例の傾向を紹介及び分析しているのに対し、本記事では実際の職務における「叱り方・接し方」という切り口から分析がされており、切り口が中々ユニークなものになっています。
・具体的には、「叱り方・接し方 10箇条」というまとめ方がされているのですが、その中でも気になったのは、以下の観点でした。
第1条
大前提:「叱ること」自体はパワハラではない
・最初の観点として「叱ること」自体はパワハラではないとあげられていたのは興味を惹かれました。
・仮に「パワハラ」に関する研修を実施するとすれば、「どういうことをやってはいけないか」という切り口からの研修になることが多いと思います。それ自体は良いと思うのですが、その大前提として、「叱ること自体はパワハラではない」ということを伝えなければ管理職が過度に委縮してしまう結果になってしまうと思います。
・では、どの程度までなら叱っても大丈夫なのかに関しては、厚労省ホームページ上の動画を具体的に指摘*1しており、本動画は非常に有益な示唆を与えてくれると思います。というか、いくつかの動画があるのですが、なんとVRも作成されています・・・!
・この記事にもあるように、法務の一つの役割として、法的リスクの観点から、事業部門等が過剰にも過小にも評価しないように、事業部門等の法的評価バイアスを取り除くことも一つの職責にあげられると思います。
第2条
人格
を否定しない/プレーを叱ってもプレーヤーを否定しない
第9条
依怙贔屓せず公平に叱る
・人格攻撃をすることなく、公平に、という視点は、よく言われることで意識することが多いのではないかと思います。
・個人的には、●●さんはここがダメという否定のベクトルだけではなく、●●さんはさすがだよね~という肯定のベクトルもパワハラというよりはマネジメントという視点からは慎重になった方が良いと思っています。肯定であったとしても「人格」を中心に据えた言動というのは、他のメンバーがどう感じるか、という視点からすると、チーム機能が最大化しない結果になることが多いのではと感じています。あくまで、プレーに着眼というのが大事だと思います。
第7条
部下に「バッドニュースファ(ー)スト」の意識をもって「ホウレンソウ」をさせる
第8条
「仕事の変化の理由」を説明する/困難な仕事をアサインする場合には「意義」を説明する
・「パワハラ」問題に対処する際は、こういう言動はセーフorアウトという視点で語られることが多いと思います。
・しかし、そもそも論として、最大限の結果を残すチームを作るにはどうすれば良いかという視点から語られることも大事かと思います。このチームの作り方という議論とパワハラの議論というのはある意味で近しいところにあり、パワハラ的な言動がダメだったらどうするのかという問いに答えるのが、最大の結果を残すチーム作りに関する研究になってくるかと思います。
・個人的には、パワハラ研修においては、このチーム作りという視点も併せる必要があるのではないかと考えています。
・この視点からすると、以下の書籍が気になるところです。
《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方
- 作者: 藤村能光「サイボウズ式」編集長
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2019/06/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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2.未然防止・有事対応の2つの視点で準備を 施行へ向け企業が確認すべきこと(宮川裕光・前掲69頁)
・ビジネス法務9月号の特集2は、「課徴金制度が大きく変わる 改正独占禁止法への準備」となっています。
・他の記事が比較的制度に関する説明となっていそうなタイトルに対し、本記事は制度の変化を前提として企業における具体的なアクションが語られていそうと感じて興味深く読みました。
・さて、そのような中で、本記事において提案されていることとしては、
① 違反行為の疑いを認めた場合、ただちに社内調査等を実施し得るように担当者・部署を定めること
② 関係者からの協力の確保、証拠資料の保全等を含む社内調査の実施手順を確認すること
③ 経営陣と担当部署との連絡・指示体制を明確化すること
④ 課徴金減免申請に関する意思決定の手続を事前に確定すること
⑤ 立ち入り検査への対応、証拠隠滅等の防止および秘密性の確保等を含む有事対応のマニュアルを策定すること
⑥ 迅速なサポートを得るために弁護士等の外部専門家リストを作成すること
といったものがあげられています。
・この中で時間と労力がかかるものとしては、②④⑤になるでしょうか。
・競争法リスクに対する業務としては、(i)日々の競争法に関する相談対応、(ii)競争法リスクに対応するための規定策定→規定に基づく研修→運用状況の監査といった一連のサイクルを回す、の2つになってくるかと思います。
・今回のような法改正を自身の業務に落とし込むためには、(ア)この2つの業務以外に対応するためのPT等を立ち上げるか、(イ)(ii)のサイクルの中に法改正を対応を織り込むか、のいずれかになるかと思います。
・どういった形で実務プロセスの中に法改正対応を落とし込んでいくかというのは、競争法に限らず悩ましい課題ではあります。
・私個人としては、日々の業務において、緊急ではあるが重要ではない課題、緊急でなく重要でもない課題にかける労力をなるべく削減し、(ア)の方法として法改正対応するアプローチを模索しています。具体的には、ITツールの積極的活用又は規定類の整備を通し、重要性の低い課題に対し、アウトソーシング又は仕組化することでリスクの濃淡管理を志向しているところです。
・逆に、(ア)の方法をとることができない場合には、(イ)の方法で法改正対応を盛り込む機会を伺うというアプローチを模索しています。
・結局のところ、法務部門における受動的職務体質を主体的職務体質へと変化させるためには、仕事の優先順位をうまくつけた上で主体的職務を行う時間を捻出する、それができない場合には、法改正、ビジネス環境の変化、新規事業への挑戦といった変化のタイミングでうまく存在感を示す、といった二段構えの方策が現実的なのではないかと現状では考える次第です。
・ちなみに、優先順位付けのためにGTDを勉強中です・・・。
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以上、ビジネス法務9月号の感想でした・・・。
勉強になりました!!
*1:https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/movie/index「動画で学ぶパワハラ」厚生労働省 あかるい職場応援団