普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務】ビジネス法務2019年9月号 感想

ビジネス法務2019年9月号を読みましたので備忘録を記載しておきます。

ビジネス法務 2019年 09 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2019年 09 月号 [雑誌]

 

 1.「管理職に知ってほしい パワハラにならない部下の叱り方・接し方10箇条」(小鍛冶広道・前掲38頁)

・ビジネス法務9月号の特集1は、「会社・社員を守る”パワハラ”への法務対応」となっています

・他の記事がいわゆる「パワハラ法制」の概要や裁判例の傾向を紹介及び分析しているのに対し、本記事では実際の職務における「叱り方・接し方」という切り口から分析がされており、切り口が中々ユニークなものになっています。

・具体的には、「叱り方・接し方 10箇条」というまとめ方がされているのですが、その中でも気になったのは、以下の観点でした。

 

第1条

大前提:「叱ること」自体はパワハラではない 

 ・最初の観点として「叱ること」自体はパワハラではないとあげられていたのは興味を惹かれました。

・仮に「パワハラ」に関する研修を実施するとすれば、「どういうことをやってはいけないか」という切り口からの研修になることが多いと思います。それ自体は良いと思うのですが、その大前提として、「叱ること自体はパワハラではない」ということを伝えなければ管理職が過度に委縮してしまう結果になってしまうと思います。

・では、どの程度までなら叱っても大丈夫なのかに関しては、厚労省ホームページ上の動画を具体的に指摘*1しており、本動画は非常に有益な示唆を与えてくれると思います。というか、いくつかの動画があるのですが、なんとVRも作成されています・・・!

・この記事にもあるように、法務の一つの役割として、法的リスクの観点から、事業部門等が過剰にも過小にも評価しないように、事業部門等の法的評価バイアスを取り除くことも一つの職責にあげられると思います。

 

第2条

人格

を否定しない/プレーを叱ってもプレーヤーを否定しない

第9条

依怙贔屓せず公平に叱る

・人格攻撃をすることなく、公平に、という視点は、よく言われることで意識することが多いのではないかと思います。

・個人的には、●●さんはここがダメという否定のベクトルだけではなく、●●さんはさすがだよね~という肯定のベクトルパワハラというよりはマネジメントという視点からは慎重になった方が良いと思っています。肯定であったとしても「人格」を中心に据えた言動というのは、他のメンバーがどう感じるか、という視点からすると、チーム機能が最大化しない結果になることが多いのではと感じています。あくまで、プレーに着眼というのが大事だと思います。

 

第7条 

部下に「バッドニュースファ(ー)スト」の意識をもって「ホウレンソウ」をさせる

第8条

「仕事の変化の理由」を説明する/困難な仕事をアサインする場合には「意義」を説明する

・「パワハラ」問題に対処する際は、こういう言動はセーフorアウトという視点で語られることが多いと思います。

・しかし、そもそも論として、最大限の結果を残すチームを作るにはどうすれば良いかという視点から語られることも大事かと思います。このチームの作り方という議論とパワハラの議論というのはある意味で近しいところにあり、パワハラ的な言動がダメだったらどうするのかという問いに答えるのが、最大の結果を残すチーム作りに関する研究になってくるかと思います。

・個人的には、パワハラ研修においては、このチーム作りという視点も併せる必要があるのではないかと考えています。

・この視点からすると、以下の書籍が気になるところです。

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

 
《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方

《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方

 

 

2.未然防止・有事対応の2つの視点で準備を 施行へ向け企業が確認すべきこと(宮川裕光・前掲69頁)

・ビジネス法務9月号の特集2は、「課徴金制度が大きく変わる 改正独占禁止法への準備」となっています。

・他の記事が比較的制度に関する説明となっていそうなタイトルに対し、本記事は制度の変化を前提として企業における具体的なアクションが語られていそうと感じて興味深く読みました。

・さて、そのような中で、本記事において提案されていることとしては、

① 違反行為の疑いを認めた場合、ただちに社内調査等を実施し得るように担当者・部署を定めること

② 関係者からの協力の確保、証拠資料の保全等を含む社内調査の実施手順を確認すること

③ 経営陣と担当部署との連絡・指示体制を明確化すること

④ 課徴金減免申請に関する意思決定の手続を事前に確定すること

⑤ 立ち入り検査への対応、証拠隠滅等の防止および秘密性の確保等を含む有事対応のマニュアルを策定すること

⑥ 迅速なサポートを得るために弁護士等の外部専門家リストを作成すること

といったものがあげられています。

・この中で時間と労力がかかるものとしては、②④⑤になるでしょうか。

・競争法リスクに対する業務としては、(i)日々の競争法に関する相談対応(ii)競争法リスクに対応するための規定策定→規定に基づく研修→運用状況の監査といった一連のサイクルを回す、の2つになってくるかと思います。

・今回のような法改正を自身の業務に落とし込むためには、(ア)この2つの業務以外に対応するためのPT等を立ち上げるか(イ)(ii)のサイクルの中に法改正を対応を織り込むか、のいずれかになるかと思います。

・どういった形で実務プロセスの中に法改正対応を落とし込んでいくかというのは、競争法に限らず悩ましい課題ではあります。

・私個人としては、日々の業務において、緊急ではあるが重要ではない課題緊急でなく重要でもない課題にかける労力をなるべく削減し、(ア)の方法として法改正対応するアプローチを模索しています。具体的には、ITツールの積極的活用又は規定類の整備を通し、重要性の低い課題に対し、アウトソーシング又は仕組化することでリスクの濃淡管理を志向しているところです。

・逆に、(ア)の方法をとることができない場合には、(イ)の方法で法改正対応を盛り込む機会を伺うというアプローチを模索しています。

・結局のところ、務部門における受動的職務体質を主体的職務体質へと変化させるためには、仕事の優先順位をうまくつけた上で主体的職務を行う時間を捻出する、それができない場合には、法改正、ビジネス環境の変化、新規事業への挑戦といった変化のタイミングでうまく存在感を示す、といった二段構えの方策が現実的なのではないかと現状では考える次第です。

・ちなみに、優先順位付けのためにGTDを勉強中です・・・。

はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

以上、ビジネス法務9月号の感想でした・・・。

勉強になりました!!

*1:https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/movie/index「動画で学ぶパワハラ厚生労働省 あかるい職場応援団

【その他】オンライン飲み会のススメ

ハーバード流宴会術

ハーバード流宴会術

 

先日、遠方の同業の知人と「オンライン飲み会」を実施しました。僕はお酒が飲めないのでコーラですが。


経緯としては、日々の仕事にてハングアウトを用いた打ち合わせを行っているのですが、これは飲み会にも使えるのでは?と考えたことによります。

 

(以下イメージ図)

f:id:chikuwa_houmu:20190804233033j:plain


さて、実施した感想としては、非常に素晴らしいものだったといえます。一時間くらいにするかと思っていたところ、三時間もやってしまいました。

当初は飲み会=対面ありきの思想でしたが、現代のネット環境はそのような固定観念を吹き飛ばしてくれました。ネットすごい。

 

一旦デメリットを度外視し、メリットのみ書き連ねると、

・わりと好きな時間に開催できる

・安上がり

・遠方の友人と気軽に飲める

・飲み会後の家に帰るまでの徒労感を味わわなくて良い←大事

といったところでしょうか。

 

その上で自分の中で考えるべきこととしては、
①アプリは何を使うのが良いのか
②飲み会以外のどの場面に拡張できるか
の二点です。

これらは今後試行錯誤していこうかなぁと思います。

 

今回は、遠方にて町弁業務に励む友人とオンライン飲み会を実施したのですが、今思うと、地方で町弁業務に励む弁護士とインハウス弁護士にて対話する記事等って中々ないなぁと思いました。

そこで、今後、地方で町弁業務に励む友人と私の双方から見た「弁護士の役割」といったものに関して継続的にオンラインで対話していこうと思います!!

またブログでもまとめたいと思います。

 

日々の生活に新たな趣味が出現しました!!

あまり直接会う機会のない友人と会話することで何か生まれるかもしれません。

オンライン飲み会おすすめです!

【法務】ビジネス法務 2019年8月号 感想

今回も備忘録を残しておこうかなと思います。冒頭には「平成から令和へのメッセージ」ということで豪華な方々のメッセージが載っておりました。

ビジネス法務 2019年 08 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2019年 08 月号 [雑誌]

 

 ①トラブルの発生・拡大を防ぐ契約解除時の法務部員の心得(中川裕一・前掲52頁)

・今回は、「契約解除の実務」が特集されておりましたが、その中でも気になったのはこの記事でした。理由としては、他の記事がわりと「理論的な側面から視点を整理する」という切り口で執筆されていたのに対し、本記事は「実務的な側面から経験を伝える」という切り口で執筆されていたのが、自分自身の問題意識と合致したからです。

・個人的に興味深かったのは、

筆者の知る限りでは欧米の企業では、ほぼ例外なく、法務部門の担当者や責任者が契約の終了に関与し、ロイヤー達が契約の終了をリードしているようだ。(前掲53頁)

という点です。

これは、すなわち、解除という場面でそれ相応のリーガルリスクが存在するということを企業自体が認識しており、かつ肝となると考えているということでしょうし、はたまた法務の側に視点を向けると、解除のプロジェクトマネージャーとしての資質が必要とされているともいえるかもしれません。

・自分が「解除」の場面でこのような役割及び付加価値を認識し、職責を全うできているかというと、正直、「否」なので、反省点であり、また課題だと思いました。

・本記事を読む中で1点気になったのは、著者の経歴を見るに*1外資系のB to Cメーカーの法務ノウハウを持っている方と推測しますが、これら企業のビジネス環境において「解除」というのはどういった場面で出てくることが多かったのでしょうか。 例えば、販売戦略の転換の観点から販売店を切り替えるタイミングなのか、需要の減少に伴い縮小均衡戦略の下で工場の下請企業を解約するタイミングなのか等様々なものが想定できるかとは思いますが、守秘義務との関係はあるにせよ、よりビジネス戦略との関わりの中で突っ込んだ解除の問題点は聞いてみたいところではあります。

・こういった方のノウハウや考えが見えるというのは本特集ならではかなぁと思います。

先輩・後輩で描く 企業法務のグランドデザイン 第2回 契約書業務からの脱却(須崎將人/中山剛志/宮下和昌・前掲78頁)

・第1回も面白かったのですが、第2回も非常に興味深いものとして読ませていただきました。

・本連載は、法務部門の契約書業務からの脱却=リスク管理部門としての再構築ということを一貫したテーマにしておりますが、今回はその中でも「交渉」というものを強く取り上げておりました。

・法務部門が交渉の現場に行くべきか否かという点は様々な意見がありますが、その点は置いておくとしても、本記事においては、「案件のプロジェクトマネージャー」というワードが何度も出てきました。

・私個人もこの「プロジェクトマネージャー」という言葉は重要なキーワードとなると思いますが、果たしてそのためにどういった能力が必要で、現状の課題は何なのかという点になると、うーんとなってしまいます・・・。

・さて、それは別として、

中山:交渉シナリオ作成のフレームワークのようなものはありますか。

宮下:①当方の要求、②先方の要求、③そのギャップ、④ギャップが発生している原因、⑤ギャップを埋めるためのオプションの順に情報を整理していきます 。(前掲81頁)

中山:私が重視するのは、自社のニーズを正確に把握し、交渉の目的を明確にすることです。 (同上)

 というのは交渉を考えるにあたって重要な点かと思います。

・私自身は、①代替案の確定、②利害を踏まえた提案内容、③説得のためのストーリーはよく考え、かつ事業部門への支援方法として意識することが多いです。交渉の本も何冊か読んでおりますが、以下の本は結構参考にしました。

ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる! (三笠書房 電子書籍)

ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる! (三笠書房 電子書籍)

 
戦略的交渉入門 (日経文庫)

戦略的交渉入門 (日経文庫)

 
企業内法務の交渉術

企業内法務の交渉術

 
武器としての交渉思考 (星海社新書)

武器としての交渉思考 (星海社新書)

 

・交渉の分野ですと、要件事実的な原則例外思考が大事ですから、まさに司法修習の思考スキームが役に立つ場面かと思います。あとは、行動経済学、心理学、哲学、アニメ、小説等から人間心理を分析するってのは地味に役立っているのかなぁと思います*2

・あとは、

ガバナンス、コンプライアンスといったリスク管理業務では、受け身の姿勢ではなく、法務がリード・発信することが重要になる。(前掲78頁)

てところでしょうか。これは言うは易し行うは難しで、組織ごとにどういう付加価値を提供できるか、その資源は何かを考えるとこなので、非常に難しいが、やりがいある仕事だと思います。法務部門が握る経営資源とは何なのでしょうか

連載:若手弁護士への箴言 競争的解決と協調的解決(髙井伸夫・前掲87頁)

・髙井先生ほどの経験と実績を備えた方がどのように考えているのかを知ることは非常に興味深かったです。なお、「箴」という漢字が読めず、変換に苦労いたしました笑

・本記事のテーマとしては、

そばはそば粉だけでなく、"つなぎ"の存在があってはじめて美味しく食べられるものであるのと同様に、組織の場合も、専門的能力を備え高い成果を上げる自律した"そば粉社員"だけでは成り立たず、専門性は見劣りがしても組織の一員としてのつなぎのような役割を果たす"つなぎ社員"の存在によってうまく機能する(前掲87頁)

 という「そば粉理論」にあるのでしょう。

・当たり前のことを言っていると言ってしまえばそれまでなのですが、では、自分自身の職務を振り返ったときに、自分のことだけではなく、周囲の他者のことも考えて仕事ができているかといわれると、うっ、と思ってしまうところがあります。

・例えば、組織内で有資格者でいることの意味は何なのか、それによってどういう付加価値をもたらすことができるのか、付加価値の対象は事業部門だけでよいのか、部門内に対して何らかの付加価値を提供できないか、等考えることはたくさんありますし、個々の課題を実行しようとすると中々時間が足りなくなるものです・・・。

「三方良し」とはよくいうものです。

 

今回気になったのはこういった点でした。

では、また!

*1:アディダスジャパンユニリーバジャパンホールディングス、ダノンジャパン等の経歴をお持ちとのこと。

*2:読書メーターも地味にやっているのですが、読んだ本の感想をコツコツアウトプットする作業も何かこう役に立ってるなぁと思う次第です。https://bookmeter.com/users/619211

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2019年8月号 感想

8月号も備忘録として記載しておこうと思います。なお、特集は「ライセンス取引」であるのですが、日頃実務的にあまり扱っておらず、強い問題意識がないためスルーします笑

Business Law Journal 2019年 08 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2019年 08 月号 [雑誌]

 

 

「法務部門CLOSE UP サイボウズ株式会社 法務統制本部」(BUSINESS LAW JOURNAL No.137 2019年 Lexis Nexis 16頁)

・いわゆるIT系企業の法務のあり方というのは、日頃、直接の馴染みがあるわけではないので中々興味深く読めました。

・自身の職務との関係では、情報共有のあり方との関係で、

各メンバーが、今どれだけのタスクを持っているのかをお互いに「見える化」しています。(前掲・18頁) 

 ということで明確な見える化を意識している点は参考になりました。

・ここからは個人的な感想になりますが、法務部門はこのような意識を持っていないと、どうしても個人商店化してしまうおそれが付きまとうと思います。それでええんや、という意見もあるかもしれませんが、やはり組織のリスク管理体制は組織内のリスク感度の成熟度に応じて更新していく必要がある以上、情報共有を徹底する必要があるというのは法務部門の持続可能な成長という観点からは必須のことでしょう(では、このリスク感度の成熟度をどうすれば定量面・定性面で測ることができるのか、は難しい問題だと思いますが)。

・あとは、情報共有の目的と対象を何にするのか、も難しい問題だと思います。法務部門が直面する壁としては、①事業部との壁、②部門内の壁、③拠点間の壁といった3つの壁を想定できますが、これらを打ち壊す「共有化」とはどうすれば良いのでしょうか。また、対象とする情報も、①個々の案件といった各論の情報②法務部門がどうあるべきかといった総論的な情報、の2つが想定できますが、前者は共有化ツールで解決可能だとしても、後者は言うなればコミュニケーションの問題に帰するとは思いますので、この課題を解決するITツール及びその使い方の事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。法務部門でのこの辺りのうまくいったケースがあるようであれば是非とも知りたいですね。

 

②「DeNA 著作権侵害事件とベンチャーの経営変革ー不祥事の解剖学【特別編】 ベンチャーの経営変革」(BUSINESS LAW JOURNAL No.137 樋口晴彦 2019年 Lexis Nexis 92頁)

・タイトルの通り、DeNA著作権侵害事件に関しての分析が行われていく本連載ですが、今回も興味深く読めました。

・事件自体の分析に関してはなるほどと思うのですが、それ以上に面白かったのは、

ベンチャーの急成長期の前半は、起業家が強いイニシアティブを発揮することが不可欠であるため、補佐役を起用して「起業家に不足している能力」を補完することが有用である。(前掲・93頁) 

先行研究を整理すると、補佐役の本質的要素は、「経営者の弱点の補完」と「経営者との特別な信頼関係」の2点と認められる(前掲・93頁)

 という指摘です。

・この「補佐役」というのはよく考えてみると非常に難しい概念だと思います。実際仕事をやっていると、華やかな活躍をするビジネスパーソンや他人の話を聞くと(大体は隣の芝生は青いだけですが笑)、補佐役に徹するというのは中々難しい心理になるかもしれません。しかし、そんな中でも、法務という職責を担う以上、この「補佐役」=「支援者」という概念に対する理解は深めなければいけないと思います。相手が思っているだろうと相手がこう思っていてほしいは違う、内容を決するアプローチ以外にプロセスを設計するアプローチや判断過程統制類似のアプローチを用いた成果の出し方など、日々多くのことを考え、かつ引き出しを増やす必要があるなぁと思っておる次第です。

・個人的には、この「支援者」という概念と「弁護士資格」というのは非常に相性の良いものだと思っておりまして、有資格者の一つの強みにできる職責なのではないかと思っています。

 ・ちなみに、私がこの「支援」という立場から自身の職責を考えるにあたってバイブルとしている本は、以下の書籍です。エドガー・H・シャイン氏の著書は他にも刊行されていますが(キャリア・アンカーとかプロセス・コンサルテーションの方が有名でしょうか?)、いずれもこの「支援」という明確な軸を基に論が展開されていくので非常におススメです。

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

 

③「辛口法律書レビュー(2019年5月)」(BUSINESS LAW JOURNAL No.137 企業法務系ブロガー 2019年 Lexis Nexis 122頁)

・毎号楽しみに読ませていただいておりますが、このお方はほんとにすごいですね笑一体、法律書を月にどれくらい読まれているのでしょうか。見習いたいものです。

・ 今回レビューされていたのは、

Q&A若手弁護士からの相談 374 問

Q&A若手弁護士からの相談 374 問

 

という本です。

・タイトルや内容からすれば、いわゆる一般民事を対象とした書籍なのですが、本記事においては、本書籍の企業法務での有用性が書かれており、なるほどと思わされました。 

・特に、興味深かったのは、

弁護士倫理上、弁護士は何ができないかを正しく理解しておくことも必要だろう。(前掲・122頁) 

 という点です。

ここで指摘されているように、有資格者ではない法務パーソンにとって「弁護士倫理」というのはあまり馴染みのないものだと思います。ただ、弁護士はこの「弁護士倫理」を守る必要があり、この中でしか行動はできないというのはすごく大事な視点だと思います。

・個人的には、弁護士有資格者の強みとして、①事実認定能力、②要件事実的思考、③弁護士倫理、の修習で身に着けるべき3要素があると思いますが、本指摘はまさにこの③を活かすための視点かと思います。有資格者が目指しうる一つの形である弁護士の能力を最大限引き出すことができる弁護士を目指す上でも、この視点は非常に大事かと思います。

・あとは、本記事でも指摘されていますが、企業法務に特化した類書の発行を!!!出版者様お願いします!!!笑

 

以上、本号にて感じたことのまとめでございました。

【法務】ビジネス法務 2019年7月号 感想

こちらも今更ですが、備忘録として気になった記事に関して感想めいたものを残しておきます。

 

ビジネス法務 2019年 07 月号 [雑誌]

ビジネス法務 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 

①「下請法違反を生じさせないシステム導入・教育」(和田壮史 ビジネス法務2019年7月号43頁)

・今回は「下請法実務の総点検」が特集となっており、どの記事も、様々な視点から下請法に関する有益な示唆が得られるものになっているなぁと感じました。

・その中でも、本記事が印象に残ったのは、他の記事に比してシンプルであった点。要するに、実務で最初に手を付けるべき「幹」となる部分はどこか、というのがわかりやすかったので、なるほどと感じました。

・「幹」となるのは、トップマネジメントによるコンプライアンス順守の視点、リスク対応を発注システム自体でカバー、教育の実施、書面監査への対応というのが簡潔でわかりやすかったです(あとは内部監査もか?)。

・課題欄でもあげられていますが、調達部門以外の部門で発生しうる下請法リスクにどう対応するか、というのは中々難しい問題かと*1。同じような啓蒙活動との考えもあるだろうが、リスクとの兼ね合いでここまでやるかという考えもあるだろうし、e-learningで済ませるというのもありかもしれない。

・個人的には、現場のリスク感覚の成熟度に応じて、教育内容や監査内容は都度見直していくべきだとは思いますが、その辺りも検討していくと考えることが多いですね。

 

②「先輩・後輩で描く 企業法務のグランドデザイン 第1回 これからの法務を考える」(須崎將人・中山剛志・宮下和昌 ビジネス法務2019年7月号54頁)

・タイトルを見てもわかるように壮大な試みであり、是非とも、今後の法務を考えるための一つの試金石となる企画になってほしいです。期待です。

・まだまだ企業法務界の若輩者である自分に本記事を語りつくせる見識はないですが、おっと思うフレーズとしては、

では、契約法務からどの方向に企業法務が進めばよいのだろうか。それは簡単に言うと、企業のリスク管理を担う組織として法務を再構築することである。(前掲56頁)

という点でした。

・個人的に思うのは、「企業のリスク管理を担う組織としての法務」というのを具体的なレベルに落とし込むとどういう仕事をなし、能力が必要とされるのかを考えていくのが、まぁ難しいという点です。各組織の実情によって違うでしょうし、それを考え、実行するのが法務マンの腕の見せ所やと言われればそれまでですが・・・。 

・例えば、リスクといっても、QCDに関わるリスク、コンプライアンスリスク、リーガルリスク、知財リスク等々とたくさんあり、それを主管する組織も様々な場合、その中で法務はどういう立ち位置になっていくのでしょうか。

・こういった組織論については、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(経産省 平成30年4月)*2でも、

複雑化するリスクに対しては、ビジネス・財務・税務・リーガル等の 総合的な判断が重要になるが、社内の様々なファンクションやプロセスが切れて しまっており、「タコツボ」化しているとの指摘もある。(前掲・28頁)

とあり、難しい課題なのでしょう。

・誰か偉い人、道を示してください・・・泣

 

③「法務部に伝えたい ”実効的”内部監査のコツ 第3回 その行動は合理的か?-違和感を大切に」 (樋口達 ビジネス法務2019年7月130頁)

・これはすごく面白いなぁと思いながら読みました。なぜかというと、内部監査の本てたくさんあると思うのですが、「法務」という視点から内部監査を論じる本て以外にないということから、結構興味深かったです。

・特に、「違和感」というものにフォーカスしているのが、すごく印象に残りました。

「違和感」といえば「不合理さ」というものに言い換えることもできるのでしょうが、これはまさに、「事実認定力」という司法研修所で考え方を習得する能力の一つを活かせる場面になるのかなと思います。

・あとは、この連載でも触れられていますが、「違和感の共有化」ってのが大事だと痛感しました。「共有化」による多角的な検証等が大事。「事実認定力」に「共有化」を行うためのプロセス構築能力が加わればさらなる強みとなっていくのでしょう。この辺りは意識しないと鍛えられないですからねぇ。

 

以上、今回の感じたことの備忘録にて。

*1:「社内監査の方法と実施のための体制整備」(村田恭介 ビジネス法務2019年7月号31頁)にも同旨の指摘あり

*2:

https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002-2.pdf

【法務】BUSINESS LAW JOURNAL 2019年7月号 感想

今更ではあるが、備忘録も兼ねて表題の雑誌記事の感想をつらつらと書いておく。とりあえず、気になった記事は以下の3つ。

 

Business Law Journal 2019年 07 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 

①「海外取引トラブルにおける法務担当者の役割」(中尾智三郎 BUSINESS LAW JOURNAL 136号24頁(2019年))

・企業内の実務担当者らしい記事という印象。

・極めてざっくりまとめてしまうと、契約書の文字だけ読んでいても意味はない、あらゆる角度からビジネスと連動させないと意味はない、というところでしょう。

・特に、

意見が分かれる点かもしれませんが、交渉まで担当しないかぎり、契約書は「読めない」「書けない」「分からない」ようにように思います。(前掲・25頁)

という点は、考えさせられる。

個人的には、①法務担当者が交渉現場に行くべき案件はどのような案件か、②行くべき企業文化が醸成されていない場合にどうすべきか、という点は考えなければならないと思っている。

前者については、正直なところ、未だ自分の考えがまとまっていない。どういった点を考えていけばよいのだろうか。要検討。

後者については、

(STEP1)持ち込まれた事業部の案件について深くコミットし、かつ成果を出す

(STEP2)STEP1を繰り返し、事業部門の信頼を得る

(STEP3)案件のスタート時からコミットし、かつ主体的な支援提案を行う

くらいにまで、徐々に進めていかないと何も変わらないような気がする。ここまで来てようやく、現場に行って付加価値提供できるくらいな気もしなくもない。

 

②「海外販売店契約で頻発するトラブルとその対応策」(竹平征吾・土岐俊太 BUSINESS LAW JOURNAL 136号28頁(2019年))

・①とは異なり、弁護士らしい記事という印象。

・契約交渉⇒取引継続中⇒契約更新⇒契約終了、という時系列という切り口からDistributor Agreementにて問題となりうる論点を整理するというのは参考にさせてもらおうと感じた。こういう視点では見ていなかったなぁ。

・検討すべき点の一つとして競争法上のリスクがあげられているが、競争法上の問題が発生しうる場面という観点からすると、horizontalな関係よりも、verticalな場面の方がより経済法的な側面の検討が必要=ビジネスにより踏み込んで実態を把握する必要+リスクがある場合の別案提案の必要といった点に関する難しさを常々感じる次第である。また、Distributorの売り先の属性によってもリスクが異なってくるので(民間なのか官公庁なのか等)、検討の難しさを感じる次第。

・Agent Agreementについてはあえて触れないという方針をとっているようではあるが、実務においてもままにあるのではないかとの印象(業界による?)。この場合だと、commissionの金額と税務的な視点等別途の論点が出てくるのでしょう。

 

③「中国・ASEAN企業と締結する調達・販売契約のトラブルとその対応策」(江口拓哉 BUSINESS LAW JOURNAL 136号51頁(2019年))

・中国・ASEAN企業との取引において問題となりそうなポイントに関して、かゆいところに手が届くことが結構書いており、非常に参考かつ勉強になった。

・特に、保険や仲裁実務の最新の動向といったところにまで触れられており、例えば、仲裁機関の選択に関して新たな視点を持つことができたように思う。

・加えて、L/Cの発行銀行の選択基準にまできちんと踏み込んだ検討がされているのは、企業の実務担当者としてはかなりおっと思わせられるレベルの気づきを得ることができた。

 

以上、今回の参考になった点に関する備忘録。

【開設】ブログの方針

こんにちは!

この度、ブログを開設したちくわと申します。

 

企業法務パーソンであり、また、無類のアニメオタクでもあります。

その他、私生活において幅広く趣味を嗜んでおります。

 

早速ですが、本ブログのテーマは、

①法務

②アニメ

③その他

の3つの切り口で記事を書いていきたいと思っております。

この切り口を設定した理由としては、現在の自分自身を構築しているのがこの切り口であることによります。「その他」と幅広い切り口を設定したのはご愛嬌ということで・・・。

 

ブログの内容としては、これらの3つの切り口から私が日々接する書籍、作品等の感想、批評等を行っていく予定です。

主たる意図としては、私の考えを言語化し、ブログとしてアウトプットすることにより、自分自身の研鑽及び備忘録とすることです。

 

拙いご挨拶となりましたが、コツコツと記事をアップしていければと考えておりますので、よろしくお願いします!!