普通の法務の現場録

企業法務人の管理人が、「普通の法務の現場目線」という切り口で、現場の暗黙知を言語化しようと試みているブログです。

【法務・アニメ】まだまだあるよ!法務に役立つかもしれないアニメ10選

こんにちは!

ちくわと申します。

本記事は、2021年の#LegalACの1つとして書きました。

くろとわ@clo_towaさんよりバトンを受け取りました。

 

昨年のLegalACにて経営アニメ法友会なる団体*1を設立して以来、Twitterにおいては「#経営アニメ法友会」というハッシュタグにて、会員各位の手で法務×アニメの可能性が追求されてまいりました。会員各位にはこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。

また、分科会としてコモパン部会、ポイ活部会、しろたん部会などの様々な部会が設立され、日々団体としての活動が活発化しているところです*2

 

そのよう中で、法務×アニメの可能性をさらに追求し、その裾野をさらに広げていかねばならないという強い使命感を感じ、今回も、性懲りもなく、法務に役立つかもしれないアニメを10作品ほど選定させていただきました*3*4

 

それでは、私の独断と偏見に満ちた「法務に役立つかもしれないアニメ10選」をお届けします。

 

● 法務に役立つかもしれないアニメ10選

 

① 侍ジャイアンツ(1973年‐1974年)

・魔球を駆使する昭和を代表する野球アニメ

・主人公の番場蛮(ばんば ばん)が巨人に入団し、独自に開発した魔球を駆使しながら、実際に活躍したプロ野球選手を相手に活躍していく熱血野球アニメ。

・私が取り上げたいシーンは第21話「出たぞ!ハイジャンプ魔球」*5にて登場する。問題のシーンは注の動画17分15秒以降である。このシーンでは主人公の番場蛮がハイジャンプ魔球と呼ばれる魔球、すなわち、マウンド上で大きく飛び上がってミットめがけて投げる魔球が描かれる*6

 しかし、これはどう見てもボークではないか

 これに対し、劇中では、審判団が野球規則8.01 a)「実際に投球するときを除いて、どちらの足も地面から上げてはならない。」を反対解釈し「実際に投球するときは、どちらの足も地面から上げてよい、すなわち、ジャンプしても良い」と述べボークではないとし、また、王選手と川上監督もありったけの文献を調べたとも言っている。

 それでも私はまだ納得できないので改めて野球規則を見たところ、野球規則2.38「投球時に投手は軸足を投手板から離してはいけない」を見つけた。この条項は、見る限り、先の野球規則8.01 a)の前提となっている条項だと思う。やはりボークだと思う。たぶん審判は間違っている。

・法務の仕事に関与していると、外部の専門家に見解を聴くことも多いと思う。そんなとき、直感には反するものの、これは適法/違法ですという回答をもらうこともある。こんなとき皆さんはどうするでしょうか。直感を無視しますか、それとも直感を信じて別の方策をとりますか。そのひと手間で事業の行く末が変わることもあると思う。

 

② 銀河鉄道999(劇場版)(1979年)

・不朽の名作SFアニメ

・機械の身体を手に入れることできる星へ行くために銀河鉄道999に乗り込んだ星野鉄郎と謎の美女メーテルを中心に様々な星々の様子が描かれる冒険活劇*7

・本作品における名キャラクターといえば、キャプテン・ハーロックだと思う。その中でも彼の屈指の名言と言えば、「負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある」というものだろう。

・法務に持ち込まれる案件というのは多種多様なものがある。前向きに取引を進めるためのものに始まり、既存の取引に何らかのトラブルが発生した場合の対応といったものまで、ほんとうに多種多様なものがある。そんな中、どう考えてもこれは負け筋ではないかと感じるものもある。そんなとき、どういった方針で対応するだろうか。これは法務の見せ場だぜ!と考えて何とか勝てる戦略を考えるだろうか。それとも、負けることは冷静に受け止めてより良い負け方を模索する戦略を考えるだろうか。目の前の案件も戦略が間違っていてはあらぬ方向へ行ってしまう。今一度、冷静に目の前の案件を見つめる心を忘れずにいたいと思う。

 

③ 機動戦士Zガンダム(1985年‐1986年)

・私がガンダムシリーズ*8にハマったきっかけの作品。

一年戦争から7年後の世界、エゥーゴティターンズ、そしてアクシズという3つの勢力が混ざり合う戦役、そのような中を主人公であるカミーユ・ビダン、前作登場のアムロ・レイシャア・アズナブル*9等のキャラたちが戦役を戦い抜く様子が描かれる。

・本作品で描かれるエピソードの1つとして、第48話「ロザミアの中で」という話がある。本作品では複数の強化人間の様子が描かれるが、その一人であるロザミアに焦点が当たった回である。さて、このロザミアには、ゲーツ・キャパという監視役が存在する。「兄」という役割を与えられて*10「監視」と「制御」という観点からロザミアに接していく。そして、最後は悲劇が起こる。

・法務の仕事をしていると、いずれは後輩指導といった職務を担うことになってくると思う。その際、どのような姿勢で臨んでいくことになるのか。仕事上の距離感を超えて「親」のような距離感で接していないだろうか。後輩が自分の思うとおりに動くように「監視」と「制御」という姿勢をとっていないだろうか。適切な「人的距離」を保てているだろうか。常に自問自答していきたい。

 

④ ご近所物語(1995年‐1996年)

・恋模様を描いた作品といえばこの作品*11

・服のデザイナーになるために日々頑張っている主人公の幸田実果子を中心に、隣人の山口ツトムとの恋愛模様やその友人たちの人間関係を描いた作品。

・本作品のOP曲「ヒ・ロ・イ・ン」は、初見では中々、ん?という印象を与えるような気もするが、何度も聴いていると味わい深くなってくる。

 そんな中でも、法務的に着眼すべき歌詞は2番のサビに存在する。

燃えて燃えて恋も夢も ほらルール作ったモン勝ち

・昨今、界隈のバズワードの1つとして「ルールメイキング」という言葉がある。そこでは立法そのものに関わっていくことが想定されていると思う。しかし、法務の担当者レベルで見ても、「ルールを作る」というのはいつも身近なところにある。例えば、契約はその取引のルールそのものである。それならば、どんな取引でも自社に有利な雛形を準備し、見積もり段階から有利な土壌を作っておけば良いかというと、意外とそうではない。契約条項は価格に跳ね返る。過度に有利な契約を作りすぎた結果、価格面で思わぬ事態となり利益がでないということもありうる。結局のところ、リスクを含めてコストとベネフィットのバランスをとるように、事業部サイドと意思疎通をしていくことが重要だと思う。何でもかんでも作ったモノ勝ちではないところが面白い。

 

⑤ おジャ魔女どれみ

第1期:1999年‐2000年、第2期:2000年‐2001年、第3期:2001年‐2002年、第4期:2002年‐2003年)

・世代であればみんな歌えるオープニング曲

・自称「世界一不幸な美少女」こと主人公の春風どれみが、ひょんなことから幼なじみの藤原はづき、転校生の妹尾あいことともに、魔女見習いとして修業に励んでいくことにになり、また、学校生活の中での悩みや人間関係の悩みなどの小学生の遭遇する日常をも描いた作品。

・上記のように、本作品のオープニング曲「おジャ魔女カーニバル」は世代であればみんなが知っているほどの名曲である。カラオケで歌えば盛り上がることも間違いない。おそらく。それほどの中毒性がある*12

・法務的に着眼すべきは、おジャ魔女カーニバル」のBメロの歌詞である。

 そこにはこうある。

教科書見てもかいてないけど、子猫にきいてもそっぽ向くけど、でもねもしかしてほんとーにできちゃうかもしれないよ!?

・実務で遭遇する問題には様々な問題がある。中には江頭会社法を見ても書いておらず、上司に聞いても知らねーよとそっぽを向かれるような問題に遭遇することもある。しかし、法務の立場としては何らかの判断を示さなければならない。そんなときに大事なのは、相談できるルートを日頃から多数準備しておくということだと思う。何も一人で抱え込む必要はない。

 それでは、どのようにしてルートを多数準備しておくか。こればかりは、日頃からアンテナを立てて、必要な専門家と知り合える場所に積極的に出向いていくしかないと思う。そして、まずは小さい案件からお試しで相談してみる。加えて、うちは十分な顧問弁護士もいるし…と思っていても、人は老いるものである。もしかしたら10年前の知識でやっているかもしれない。適度なプレッシャーを与えるためにも、常に他の相談先の選択肢を開拓する姿勢は忘れてはいけないと思う。それが健全なビジネスの関係だと思う。

 

⑥ ほしのこえ(2002年)

新海誠監督による短編遠距離恋愛アニメーション

2039年人類の調査隊は火星に到達するものの、そこで遭遇した知的外生命体タルシアンに全滅させられてしまう。主人公の長峰美加子と寺尾昇は互いにほのかな恋心を抱くものの、美加子は調査隊として宇宙に旅立つ。そんな中での二人の交流のお話。

・本作品のテーマは間違いなく「距離」というものである。作品中の二人の距離というものを追っていくと、地球と宇宙という「物理的な距離」、メールの伝達速度に伴う「時間的な距離」、そしてそれに伴う「心の距離」と、様々な「距離」というものが出てくる。

・法務の世界でもコロナ禍の影響によりテレワークでの仕事が普及した。様々な観点で意見が述べられているけども、変わったことの1つとしては「同僚との距離」というものがある*13。みんながオフィスで仕事をしていた頃であっても隣の人が何をやっているのかわからないという状態というものはあった。そこと比較すると、より何をやっているのかわからないという状況はある。そのようなときに担当者はどんな心境になるか。同僚への「不安感」を感じるかもしれない。上司にどう思われているかとの「不安感」もあるかもしれない。そして、その「不安感」「不信感」に繋がるかもしれない。「同僚との距離」は適切なものとなっているか日々考えてみたい。

 

⑦ コードギアス反逆のルルーシュ(1期:2006年‐2007年、2期:2008年)

・圧倒的中二病系アニメ。

・世界の3分の1を支配下に置く「神聖ブリタニア帝国」。主人公のルルーシュランペルージは、殺された母の復讐と妹の未来のために、手に入れた「ギアス」という能力を用い、仮面の男「ゼロ」として、帝国への反逆を行う物語である。

コードギアスの衝撃回と言えば、第22話「血染めのユフィ」である。ルルーシュは妹であり皇女であるユフィに自分を撃たせ、ユフィの失墜、自らは復活を遂げる「奇跡」を思い描く。その際のルルーシュのセリフが、「人は理屈では無く、奇跡に弱いものなんだよ」というものである。この後、主人公ルルーシュの予想外の事態により妹であるユフィにより会場に集まった人々は…。

・法務の人は間違いなく理屈屋である。理屈屋であるからか、界隈の人々を見ていても、言っていることは「正しい」ことが多い。法的な根拠もしっかりしている。しかし、それだけでは動いていかないのが「組織」であり、「人」である。目の前の人が動かない理由は何なのか。不安なのか、保身なのか。それとも、なのか、面子なのか。はたまた、何も考えていないだけなのか。目の前の人が動かないときに、もっと法的根拠を集めねばというアプローチではなく、別のアプローチも並行して探っていく必要は大きい*14

 

⑧ アイドルマスター XENOGLOSSIA(2007年)

・アイドルアニメではありません!ロボットアニメです!

・未来の地球を舞台に「IDOL」(アイドル)というロボットを操縦する少女たち(アイドルマスター)の戦いの姿を描いていく。いわゆるアイドルマスターと同姓同名のキャラが登場するものの、全くの別物と考えて視聴するのがこの作品を楽しむ秘訣だと思う。

・本作品の第5話「冷たい手、温かい手」においては、作中にてアイドル活動をしている高槻やよいがメインパーソナリティーを務める高槻やよいのやよい式ラジオ」*15が打ち切りの危機に瀕しており、その存続を図るため、主人公である天海春香らに投稿はがきを無理やりかかせて、視聴者数を捏造する方策をとっている。ラジオも「数」で判断されるようである。現実は世知づらい。

・法務界隈で最近よく出る話題の一つに定量化」というものがある。出てくる文脈を見ていると、法務責任者が経営陣等にどのように法務の実績をアピールしていくかという側面で話題なることが多い。

 しかし、担当目線で見ても、この「定量化」というものは一つ考えなければならない。例えば、直属の上司は間近で見ているので「定性的」な仕事ぶりを見ているかもしれない。だが、最終的な評価権者が直属の上司のさらに上司であるなら、そこにまで到達するように伝える方法を考えなければならない。その時の武器の1つは定量化だと思う。ただし、あくまで武器の1つなので、あの手この手は状況によって考えていくことになると思う。仕事で損をしてはいけない。

 

⑨ Re:ゼロから始める異世界生活(1期:2016年、2期:2020年‐2021年)

・アナタ、怠惰デスね?

突如異世界に召喚された引きこもり高校生のナツキ・スバル、そんな彼はひとつの特殊能力を身に着けていた。それは死に戻り。そう、文字通り、一度死ぬことでタイムリープをするというもの。このタイムリープ能力を用いて異世界での活躍を描く。

・本作品は、まさに、タイムリープがカギとなっている。作品を見ていただければわかるが、どうすれば未来を切り開けるかと何度もタイムリープする。道を切り開くために何度も何度もやり直す

・よく法務界隈の言説を見ていると、言葉の使い方に関して法律用語ではなく事業部の言葉でというのを聴くことがある。個人的には言葉の使い方だけではなく、物事自体の伝え方、すなわち、言葉で伝えた方が良いのか、図表で伝えた方が良いのかといったビジネススキルの面でも事業部サイドの思考・作法を理解するというのは大事になってくると思う。*16そうでないと本当に何も伝わらない。何度も何度もやり直す羽目になる。人は文字をじっくりと読むのが当たり前といった前提すら法務サイドのバイアスではないかとすら常に頭に入れておいた方が良いと思っている。法務サイドのバイアスは意外と多いと思う。

 

⑩ ゆるキャン△(1期:2018年、2期2021年)

・圧倒的ゆるふわキャンプアニメ!

・ソロキャンプが好きな志摩リン、キャンプ初心者であるモノの持ち前の明るさで天然に暮らしている各務原なでしこ達の出会いを中心に、高校の同好会である「野外活動サークル」にて、毎週末のキャンプを通してゆるくもしっかりしたキャンプ生活を送る様子が描かれる。ちなみに、出てくる犬の名前が「ちくわ」である*17

・本作品の特徴はその圧倒的なゆるふわ感である。主人公たちを中心に圧倒的なゆるふわの雰囲気の中で話が進んでいき、人間関係のいざこざというものが描かれることもない。にもかかわらず、キャンプについてはその準備も含めてしっかり描かれている。間違いなく、キャンプに行きたくなる。

・法務の仕事をしていると、どうしても仕事のことが頭から離れない人々がいる。土日にもかかわらず、ネット上でも法務の話をしている人もいる。好きなことに集中する姿は、それはそれで尊いことだと思う。しかし、一方で、それは思い詰めてしまうことにもつながることもある。なぜうまくいかないのか、なぜ理想の自分とのギャップがあるのか。そんなときこそ、法務関連以外の本を読んでみる、土日にふらっとどこかに行ってみる、誰かとふっと話してみるといったことを試すのは重要だと思う。法務以外のことにも少し目を向けてみるだけで解決すること多くある。本作品は仕事熱心な人ほど忘れがちなことを思い出させてくれると思う。

 

● おわりに

 

 

百選まで続けます。

 

 

それでは、次回は、関原秀行さんです。お楽しみに!

 

以上

*1:名前のよく似た某団体とは無関係です。

*2:年末にWeb総会やるかも…

*3:

第1弾はこちら。

chikuwa-houmu.hatenablog.com

*4:

第2弾はこちら。

chikuwa-houmu.hatenablog.com

*5:

www.youtube.com

*6:昔、何かのテレビ番組で、バリーボンズと本作の魔球再現で戦うのあったよね。

*7:劇場版の方が鉄郎がイケメンだと思う。

*8:それと、富野作品。

*9:本作ではグラサンの人。

*10:お兄ちゃんだよとかも言ったりする。

*11:この時間帯の枠はママレード・ボーイ花より男子もあり、中々良い味がある。

*12:一方で、OP映像を眺める度に不思議なノスタルジーに襲われることもある。しかし、我々はもうこの頃に帰ることはできない、という残酷な現実を受け入れる必要もあることは、ここに記しておきたい。

*13:距離感の問題じゃなく、人格の問題と飛びついてしまう人もいるのよね。一歩立ち止まるのが大事と思う。

*14:かといって、単なる「調整力」だけではいつかはうまくいかなくなるとは思っている。第一義的には、「法的なリスクマネジメント能力」をコツコツと鍛えていくことが重要であることは忘れてはならないと思う。そこをはき違えてはいけないと思っている。

*15:「こんばんやよやよ~」が挨拶です。

*16:法務の人の一般的な傾向として、図表を用いた資料を作成するのが苦手というのはあるような気はしている。しかし、企画系の仕事をするのであればこういったスキルは必須だと思うし、偉い人の意思決定に必要な資料を作成する際には特に必要になってくると思う。こういったスキルは気にしないと身につかないし、法務業務では中々身に着ける機会も少ないと思うので、意識して磨いていく必要があると思う。

*17:センスが良い。